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学童保育のパートをしながら、父に内緒で東海研修会へ通う日々

――東京を引き揚げて、ご両親がいる金沢に戻られたのですか。

田中 はい。9月に金沢に戻りました。父には「二度と女流棋士を目指すな。早く就職しろ」と言われました。ハローワークに行って、学童保育の指導員のパートを始めました。2020年の11月18日が私の26歳の誕生日。25歳のうちに研修会に入り、27歳の誕生日の前に研修会でB2に上がらなくては女流棋士にはなれません。しばらく迷って、10月に手続きをして11月の第一例会から東海研修会に入りました。C2入会で、前回と違い女流3級という“仮免許”のような制度はなくなりましたが、プロである女流棋士2級になるためには、2クラス上のB2まで昇級しなくてはいけなくなっていました。

――ご両親の反対を押し切って入会されたのですか。

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田中 父には内緒、少しは理解してくれる母にだけ研修会に戻ることを話しました。なんとか月に2回、金沢駅まで車で送り迎えしてもらうようお願いし、それはやってくれました。父からは「パートは1年だけだぞ、早く正社員になれ」と耳にタコができるくらい言われました。

――東海研修会を選ばれた理由を教えてください。

田中 東京、大阪、名古屋と金沢から通うのにかかる時間は大差ないのです。1つは名古屋の東海研修会は関西より1時間遅い10時開始で、家を出るのが朝6時で間に合うことでした。早起きは私も母も大変なので。特急しらさぎ(JR金沢駅と名古屋駅を約3時間で結ぶ)は大阪行きの特急サンダーバードより遅延が少なく、この点も良かったですね。

 コロナ禍で感染状況が悪い東京、大阪より名古屋が安心というのも大きかったです。学童保育の仕事はコロナにかかったら大迷惑をかけてしまう。緊急事態宣言で研修会が休みになることもあったので、東海のほうがその可能性が低いという読みもありました。のちにその読みは当たり、関東、関西研修会が2カ月休みになったとき、東海研修会は1カ月の休みですみました。