初めてABCDのクラス別に順位戦形式で行われた第2期白玲戦が7月に終わり、昇級者と降級者が決まった。注目を集めた1人がD級の最下位から7勝1敗の成績でC級昇級を決めた田中沙紀女流1級だ。
2年間で女流2級に昇級するという当時の規定をクリアできずに、一度は女流棋士3級のまま資格を失い、再び研修会入りして2度目の女流棋士デビューを果たした唯一の経験を持つ田中女流1級。白玲戦での戦いや、2度のプロ入りのいきさつを聞いてみた。
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負けても「次も指せる」白玲戦は、大きな存在だった
――白玲戦C級昇級おめでとうございます。今回一番順位が下からの参戦でした。D級は一番後に女流棋士になった人が最下位に入るのですよね。
田中 そうですね。昨年の8月に研修会でB2に上がり9月1日付で女流2級になりました。2度目のデビュー戦がどの棋戦になるかは気になっていて、9月に白玲戦の組み合わせ表がメールで送られてきて、10月20日にD級が開幕する白玲戦がデビュー戦になることを知りました。
――その白玲戦の初戦は山口恵梨子女流二段戦でした。
田中 「え、こんなに強い人と?」と思いました。前回2年間女流3級として公式戦に参加していた時は、最後は大事な対局に連敗して女流棋士の資格を失い公式戦の対局にいいイメージを持って終われていません。1年数カ月ぶりの公式戦、相手は強い山口女流二段、将棋連盟モバイルで中継もあるということで、対局の前からずっと緊張していました。
――自信をもってデビュー戦に臨むことができなかったのでしょうか。
田中 でも対局してみたら善戦できた。途中で「これは勝っちゃうんじゃない?」なんて思いましたし、評価値も勝勢。最後トン死してしまい、それに気付いて背筋が凍るというかサーっと血の気が引いたのを覚えています。でも、自分よりずっと上と思っていた方に善戦できて自信になりました。負けても次があるのも良かったです。
――負けて次があるという状況は経験がなかったわけですね。
田中 女流3級時代はリーグ入りの経験はありませんでした。女流棋戦は負けてしまうと「残念でした。また来年」と先がなくなってしまう。ところが、新しくできた白玲戦は、長丁場のリーグ戦で、負けても全員8局(クラスにより8~9局)指せるんです。本当に大きな存在でした。女流3級時代の終わり頃は、負けるたびに2級に上がるチャンスが失われどんどん追い込まれました。白玲戦で勝勢の将棋を落としたのは残念ではあったけれど、そんなに落ち込まず、次も指せるなんて幸せと思えました。