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――2021年8月に27歳の誕生日まで3カ月残してB2昇級されました。このときのことを教えて下さい。

田中 昇級規定の12勝4敗の星まであと1勝となった研修会の前日、前回の関西研修会時代に親しくなった藤井奈々女流初段が金沢に仕事で来ていました。少し金沢を案内して駅に送って行ったところ、同じように仕事でいらした村田智穂女流二段とばったり。奈々ちゃんが村田さんに「沙紀ちゃん、明日の研修会の1局目で勝てば上がれるんです」と言ったら「それは頑張って」と励ましてくれました。奈々ちゃんは「明日昼ごろ連絡するね」。

 女流棋士2人に前日に応援してもらえるなんてなかなかない、これは上がれるのではないかという気持ちになりました。実際に1局目で勝って上がることができ、大野先生、奈々ちゃんや圭さん、他にもお世話になった棋士、女流棋士の方々に連絡しました。圭さんには「説得してくれたお陰です」とLINEしたら、「田中ちゃんの努力だから」と返ってきました。

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 反対されたまま、ずっと内緒にしていた父には翌日くらいに話しました。私が「大事な話がある」と言ったら、父は私が結婚するのかと勘違いしたらしいです。「女流棋士になった。今度は仮ではない」と言っても父は信じない。私のことが載っている地元の新聞を見せたらやっと信じました(笑)。

 LPSAを通じて地元での普及活動を

――再デビューではLPSAに所属されました。その理由を教えて下さい。先日インタビューした代表の中倉宏美女流二段からも、田中先生がLPSAの女性大会やYouTubeなど熱心に取り組まれているとうかがいました。

田中 女流棋士を目指した最初のきっかけが鈴木英春先生の「石川県で普及をしてほしい」でしたから、普及のことが学べそうなことは大きいです。LPSAでは、私のような新人女流棋士でもやりたいと思ったことは先輩女流棋士のサポートを受けながら実行できる。

石川県のお寺で行われた「寺王戦」にて(写真提供:田中沙紀女流1級)

 石川県内のお寺で将棋を指す「寺将会」というお坊さん主催の会があり、そこで今年行われた「寺王戦」という大会に私を審判として呼んでいただきました。金沢の着物屋さんがタイアップしてくださり、綺麗なお着物を着せていただいてのお仕事です。そのときの縁で、LPSAの「女子アマ王位戦」のことを相談したところ、トントン拍子に話が進み、今年初めて北陸・中部大会を石川県で実施できることになりました。石川県の皆さんが協力的で、幼い子を持つお母さんにも配慮して将棋大会では珍しい託児も実現。地元の女性への普及につながるのでとても楽しみです。