ライブ配信サービスTwitCastingの怪談語りチャンネル「禍話」。2016年から始まったこのチャンネルでは、これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。
同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、映画ライターの加藤よしき氏だ。
今回紹介するのは、かぁなっき氏の知人女性Yさんが語ったという、弟・Tくんの体験談。九州の北西部にある寂れたデパートで起きた、ボストンバッグをめぐる恐怖の事件「あけないの?」を紹介する。(全2回の1回目/#2を読む)
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寂れたデパートの不気味なウワサ
高校1年生の夏休みの最終日前日。Tくんは同級生Fくんの家で、同じく同級生Kくんと遊んでいたそうだ。
暇を持て余すなかで、話は何の気なしに不気味スポットの話題になっていった。
最初は、この前テレビで見た心霊スポットのトンネルがやばそうだっただの、同級生の親族が肝試しで廃墟へ行っただの、ありきたりな話だったが、次第により身近な場所についての話題に移っていったという。
「でも、割と近所のお店とかにもあるらしいよ、変な噂って」
「お店ってなに、居酒屋とか?」
「それは聞いたことないけど、ずっとシャッターがしまってる雑貨屋とか不気味じゃない?」
「なんだよ、怖い話知ってるわけじゃないのかよ」
「あ……」
Fくんが思い出したように声をあげた。
「近所の変な話、この前聞いたわ」
Fくんが学校で聞いた噂はこういうものだった。Tくんたちが住む地域から電車で2、3駅離れた街に、寂れてしまった古いデパートがあり、エスカレーター脇の壁には不気味な貼り紙が残っているのだという。
「『エスカレーターに黒いボストンバッグが置いてありましたら、触らずに店員にお知らせください』って書いてあるんだってさ」
「別に怖くないじゃん」
「いや、怖いだろ! 普通こんなこと書かないし、『触らずに』ってのも変じゃない?」
「言われてみればそうだな」