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「もうお帰りいただいて結構ですよ」古デパートに現れた長髪の女はくぐもった声で…パニック状態の客が“目撃したもの”

あけないの? #2

2022/09/04

genre : エンタメ, 娯楽

 ライブ配信サービスTwitCastingの怪談語りチャンネル「禍話」。2016年から始まったこのチャンネルでは、これまでに2000話を超える怪談が紹介されており、多くのホラーファンを惹きつけている。

 同チャンネルでホストを務めるのは、北九州に住む書店員のかぁなっき氏と、映画ライターの加藤よしき氏だ。

 今回紹介するのは、かぁなっき氏の知人女性Yさんが語ったという、弟・Tくんの体験談。九州の北西部に位置する寂れたデパートで起きた、ボストンバッグをめぐる恐怖の事件「あけないの?」を紹介する。(全2回の2回目/#1を読む)

◆ ◆ ◆

「怒られないか、これ……」

 続けて3人はデパートの2階を探したものの、特にそれらしいボストンバッグは見つからない。人気のない薄暗い廃テナントと営業するお店がポツポツとあるだけだった。

「ねえな」

「じゃあ、上か……」

 ここで、Fくんが興奮した様子でとある案を持ちかけてきた。それは、ここから上の階は、1人ずつエスカレーターで最上階の6階まで上がり、道中で黒いボストンバッグを探していく、という肝試し風の提案だった。

「最初のやつが行って見つからなかったら、もうなくね?」

「余計なこと言うなよ!」

「まあ、いいや、じゃあ誰から行くの? じゃんけん?」

 じゃんけんの結果Tくん、Fくん、Kくんの順に探索することになった。

「……じゃあ、行ってくるわ」

 Tくんは緊張した面持ちで、エスカレーターに乗り込んで3階に上がり、その姿は視界から見えなくなった。

「見つけたら電話だっけ?」

「そう、電話してから持ってくる」

「怒られないか、これ……」

 話し相手が1人消えたことで、にわかに恐怖感が高まってきた。待つだけの時間というのは、案外恐怖が増すものなのだ。

 10分くらい経った頃、2人の後ろからTくんが突然現れた。

「わっ!」

「うおっ!」

「なんだ!?」

「あはは、めっちゃビビるじゃん!」

 どうやらエレベーターで降りてきて、2人を脅かそうとしたらしい。

「ふざけんなよ!」

「ごめんて。まあ、見つからんかったわ。全然なし」

「まあ、そんなもんだよな。行く?」

「いや、行くでしょ。見落としあるかもしれないし!」

 そう言い残し、乗り気のFくんはエスカレーターを駆け上がっていった。

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