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持ち上げたボストンバッグの底が…
3階からエスカレーターに乗り、4階を見上げる。
だが、そこには何もなかった。
「……ないじゃん」
「え!? なんで、さっきそこに……」
そう問答しているうちに4階に着いた。キョロキョロと辺りを見回すFくんの姿は、冗談で騙していたという様子ではない。
「えっ、あれ、おい、おい!」
背後のKくんがエスカレーターの下を指差して青ざめている。
指の先には、黒いボストンバッグがあった。
3階からゆっくりとこちらに向かって登ってきていた。
カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン、カコン……。
「これ……」
足元で引っかかり続けるボストンバッグを呆然と眺める一同。背中に冷や汗がツーッと伝わるのがわかる。
バッ!
突然意を決したかのようにKくんがバッグの取っ手を掴んだ。
「おい、触んなって!」
「置いとくわけにもいかねえだろこれ!」
「でも――」
そこでおかしなことが起きた。
グニィ……。
持ち上げた黒いボストンバッグの底が、内側から膨らんだのだ。
「うわあっ!!」
Kくんは慌ててバッグを手放した。 ドサッ。