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「ちょっと……! ヤバイヤバイ!」

 ……タンタンタンダンダンダンダン!!

 5分としないうちに反対側の下りエスカレーターを駆け降りて来る音が聞こえてきた。

「ちょっと……! ヤバイヤバイ!」

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 降りて来たFくんは顔面蒼白。

「なになにどうしたん?」

「あった! バッグ! 4階にあったって!」

©iStock.com

 Fくんは3階を探索したが何もめぼしいものは見つからなかったという。自分が言い出したとはいえ、1人でこの薄暗いデパートを探索するのは正直不気味だな。そんなことを考えながら4階に向かうエスカレーターに乗り込んだのだそうだ。

 その時だった。

 背後から人が上がってくるような、そんな気配がしたのだという。

 思わず体を端に寄せるが、誰も横を通り抜ける者はいなかった。

 ゆっくりと後ろを振り返ると、5段ほど下に黒いボストンバッグだけが置いてあったのだという。

「は、どういうこと?」

「だから、バッグだけ置いてあったんだって!」

「で、バッグどうしたんだよ」

 Fくんいわく、4階に着いた後、彼のあとを追うようにエスカレーターに乗った黒いボストンバッグはゆっくりと登ってきて、Fくんの足元、エスカレーターの終わりの部分で、カコンと引っかかったのだという。

 黒い色。革が所々はげた長い持ち手。貼り紙にあった特徴とそっくりなボストンバッグ。

「そのまま?」

「持ってこれるわけねえだろ!」

 冷風吹き付けるエスカレーターの踊り場で、額に汗を滲ませたFくんは声を荒げる。一行は4階に登っていった。