貧乏だった頃の心境
川崎 その当時は辛かったです。やっぱり貧乏ってキツいんですよ、欲しいものが買えなかったりとか、人の家が広いと羨ましかったり。でも子どもは稼げないから、早く大きくなって絶対稼ぐぞ、って毎日思っていて。
アレク お母さんに養子に出してくれって言ったんだよね。
川崎 金持ちの家に養子に出してくれって。ブチ切れられましたけど(笑)。
――お母さんはだらしない男性に苦労させられた構図ですが、川崎さんの場合は、「ヒモ」を選ぶところは受け継ぎつつも家庭を成立させています。この差は何なのでしょう?
川崎 「ヒモ」として最大限ちゃんと利用してあげないといけない。ほったらかすとアレクも父のようになると思うんですよ。全くお金にならないことをずっとやりたがったりするし。
アレク そうだね。金にならないことするの好きだね。
川崎 でもそれを何かに生かしてあげて、例えばテレビに出るとか、普通の人にはできないようなことをやってみると、急に活躍できたりするから。ヤバいところはヤバいところを売りにして育てるといいのかなと思ってて。
アレク そうやってのんちゃんに管理されてる。怖いんだよ、のんちゃんが。hideの『ピンクスパイダー』を聞きながら、のんちゃんのクモの巣に捕らえられたチョウチョみたいだって思うよ。いつ食われるかもわからないし。
川崎 あはは、そうなんだ。
アレク でも、少しずつ進化してるんじゃない? やっぱり家も3軒目って言うじゃん。男も三代目で使い方が分かるんじゃないの?
川崎 そうだね。利用の仕方が分かってきてるのかな。
――それにしてもおじい様もお父様もアレクさんも、音楽活動をしていたという共通点が。
川崎 そうですね。バンドやりたがる癖、何だろうね。
アレク 自由に友達と遊びたいだけなんだよ、俺は。
川崎 うちのお父さんもバンドをいまだにやっていて、たまにCDを自分で作って送ってきたりとか。変な歌なんだよね。なんていう歌だっけ。忘れちゃったな。お金が50円しかねえや、みたいな歌詞が書いてあったり。
アレク 『あばよ』って曲名じゃなかった(笑)。
――サポートに徹することが「いいヒモ」と「悪いヒモ」の分かれ道のようですが、そのコツは。
アレク 夫婦だから足りない部分を補い合う。そして相手のいい部分を認めることじゃない?
川崎 そうだね。この人ここ向いてないなって思ったら、すぐに役割を変える。向いてないことをずっとやっても、あまり伸びるとは思わないから。
アレク あとは自分をペットだと思うことも結構大事だよ(笑)。
川崎 大事だね(笑)。
写真=深野未季/文藝春秋