「本当にあのときに死なないでよかった」母が見つけてあわてて駆け寄ってきて…中川翔子が語る“スイッチが入ってしまった日”

『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』より#2

中川 翔子 中川 翔子
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 ついに衝動的にリストカットをしてしまいました。少しずつ何度も深く手首を包丁で切りつけて、血が流れてくる。

 その最中に母が、たまたま階段を降りてきました。無心に手首を切りつけていたわたしを見つけると、あわてて駆け寄ってきて手首を押さえて血を止めてくれました。

 母は、いつも強く明るく、悩むことがあっても決してわたしには見せない人です。

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 泣いているのを見たのは、父が亡くなった夜と葬儀の時だけ。ずっと働き続けていた母は、絶対泣かないしわたしには弱さを見せない強い人でした。

 その母が涙を流しながら、わたしを叱ったんです。

「バカ! なんでこんなことするのよ!」

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 あのときの母を忘れられません。

©iStock.com

 でもまたしばらくしてから、死にたい衝動がもう一度襲ってきたことがあります。そのときはドライヤーのコードで首を吊ろうと、ドアノブにぐるぐる巻きつけ体重をかけたのですが、目の前が白くなりました。

 すると、部屋に猫が入ってきて甘えてきました。

 最後に猫を撫でようかな、とわたしはフッと力を緩めて抱き上げました。猫を撫でているうちに、その衝動がおさまったのです。

 もしそのまま死んでいたら。

 本当にあのときに死なないでよかった、といま心から思います。

 そして、死のうとした日から大人になった今までの時間に、たくさんの新しい出会い、夢やよろこび、悩みや別れ、さまざまなことがあるなかで、本当に生きていてよかったと思うことが数え切れないほどあります。

 生きていてよかった、

 長生きしてたくさん好きなことをしたいなぁ、と思うようになりました。

 しかしいまも、その時の傷は残っています。

 子どもが自ら命を絶つことが、親にとってどれほどつらいことか。

 死んでしまったら話もできない、挽回するチャンスもなにもかも、永遠に失ってしまう。

 そして残された遺族は、永遠に消えない悲しみを背負って生きていく。