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 乳がんは比較的早期でも、全身にがん細胞が広がっている場合があり、再発を予防する術後の薬物療法が重要だ。がんの進行度やタイプによって使われる薬は変わってくるが、どんな組み合わせで、どれくらいの期間投与するかは、「標準治療」として確立している。

 埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター長(乳腺腫瘍科教授)の佐伯俊昭医師は、「自分の妻が乳がんになったら、『標準治療』をすすめる」と話す。

「よく『標準』という表現が、寿司にたとえると『並』の印象を与えますが、そうではなくて特上なんです。成功を保証するものではありませんが、ベネフィット(利益)とリスク、コストがすべて明確になっており、安心して受けられるのが標準治療です」

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 標準治療をしっかり受けるには、それを熟知している「日本乳癌学会乳腺専門医」や乳がん看護の「認定看護師」が所属し、チーム医療ができている施設が望ましいと佐伯医師は言う。

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「たとえば、腋の下のリンパ節を切除すると、腕が腫れるリンパ浮腫に悩む方がいます。また、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けたり、皮膚が荒れたりする人もいます。そうした悩みに、医師だけでは対応できないことの多いのが乳がんです。看護師、薬剤師、ボランティアなど、いろんな立場の人が支えになってくれる施設を選ぶといいでしょう」

 抗がん剤治療を受けると髪の毛だけでなく、まゆ毛やまつ毛も抜ける。前出の久留米総合病院では、メイクやスキンケアの工夫、リンパ浮腫への対応などを学べる「おしゃれ教室」を開催している。「女性はおしゃれをするだけで元気が出てくる」と、院長の田中医師は言う。こうした取り組みができるのも、チーム医療ができているからだ。

 乳がんは5年を過ぎても再発することがあるので、長く付き合える医師や病院と出会うことも大切だ。

所属は2016年6月現在

■理想の治療のための5つのポイント
(1)40歳以上の女性は2年に1度、マンモグラフィ検診を。ただし、限界があることも理解が必要。
(2)がんをくり抜いた跡が変形することもあるので、乳房温存にはこだわりすぎない。
(3)乳房を残すか再建するかは、夫や子の意見より、本人の意志を尊重すべし。
(4)再発予防に薬物治療が重要。標準治療がしっかりできる乳腺の専門医のもとで治療を。
(5)5年を過ぎても再発の可能性があるので、長く支えてくれるチーム医療のよい病院を。