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「女性器のルックスが気になるという患者さんが多いです」東大医学部卒エリート医師が“下半身専門クリニック”を開いたわけ

ヴェアリークリニック院長・井上裕章さんインタビュー

2022/09/16
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「患者さんの照れ笑いに合わせて笑わない」

――あと、性生活に直結する部分もあるので、先生に相談するのは緊張しそうです。

井上 たとえば「彼氏に緩いって言われちゃって」というとき、笑いながら話す患者さんがすごく多いんです。ただ、僕は患者さんの照れ笑いに合わせて笑うことはしないようにしています。自分自身、照れ笑いしたときに相手も一緒になって笑ったら「なんでこいつまで笑うんだ」とムッとなるので(笑)。まあ、もしかしたら「なんでこの医者笑わないんだ」と思われているかもしれませんが。

――たしかに井上先生はYouTubeの解説動画でも医師として淡々と「臓器の話」をしています。

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井上 僕としては、無理して患者さんの緊張を解きほぐそうとも思ってないというか、専門家として、職人として接したいと思っています。

 あと、「女性器を見て興奮しないのか」と聞かれることもありますが、解剖学的な視点で見ているのでそういったことはないですね。同業の医者からこういった質問をされることはないので、婦人科や肛門科の医師もみんな同じ視点で患部を診ていると思います。

 

――納得しました。こと性器整形の話は外側にしても内側にしても、人目にはまったくわからない部分の悩みですが、患者さんのビフォア/アフターに接していかがですか。

井上 ご本人のテンションは確実に上がりますね。術後の検診でお会いすると、ぱあっと明るいというか。「自分に自信が持てました」みたいなことを言っていただくことも多いです。

 たとえば、がんは寛解まで少なくとも5年かかるんですよ。5年間無再発で、ようやく患者さんと喜びをわかちあえる。それにくらべて、美容整形は効果の実感が早いんです。来院したときには真っ暗な表情をしていても、帰る頃には足取りが軽くなっていることも。思えば僕自身せっかちな性格だったので、このスピード感はすごく自分に合っているなと。

エリートコースを外れて、「下半身美容」を選んだ理由

――井上先生は東大医学部にストレートで合格。その後はがんの外科医として活躍されてきたそうですが、エリートコースを外れる選択に周囲は驚いていませんでしたか。

井上 父も兄も医者ですが、反対するもなにも誰にも相談しなかったので、反応は特になかったですね。

――他の診療科に比べて美容整形は下に見られがちと聞いたことがあります。それについてはいかがですか。

井上 自分の場合は他の科を下に見るというより、「がん治療に携わっている自分はエラい」と思っていました。たしかに医者の世界では、心臓外科、脳外科といった生命に関わる診療科の医師ほどエラい、という風潮があります。

――そんな中でなぜ下半身専門の美容整形クリニックを開院されたのでしょうか。