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天童 歌う場面はなかった。村娘の役でひばりさん演じるお夏の帯を引っ張ったりしていじめるんです。

上沼 よしみちゃんが歌わないなんてもったいない。でも、歌ってもカットになったわ。(美空ひばりの声色で)「あの子の歌はやめてっ」と、絶対言うたと思います。

天童 そんなことない(笑)。ひばりさんが「堂々とやりなさい」と声をかけてくれたことが、その後の歌手活動の支えになりました。

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〈私は歌をあきらめて…〉上沼さんの手紙

上沼 アマチュア時代、誰かに負けたことあるんですか。

天童 『ちびっこのどじまん』のグランドチャンピオン大会のあと、さらに日本一を決める大会があって、そこで負けたんですよ。優勝したのは、明るいアメリカンポップスの『ヴァケーション』を歌った女の子。ショートカットで可愛くて、すぐにでもデビューできそうな感じで。私はここで負けたから今も歌えていると思う。『のどじまん』の悔しさをバネにして『全日本歌謡選手権』(読売テレビ)に挑戦しました。

天童さん

上沼 出た! 『全日本歌謡選手権』や。あれは本当に力がないと勝ち上がれませんもんね。

天童 10週連続で勝ち抜くと、レコード会社と契約する権利をもらえる。五木ひろしさんも八代亜紀さんもあの番組の出身です。

上沼 よしみちゃんは昭和47年に『風が吹く』でデビューされます。もちろんレコードを買いに走りました。これがまたええ歌なんです。

天童 胸にグッとくるけど、ちょっと寂しい歌。いま思うと高校生の私が歌いこなすにはちょっと無理がありました。今ではうまく歌えるようになってコンサートでは必ず歌っています。今でも覚えているのが、デビューが決まったら真っ先に恵美ちゃんがお手紙をくれたこと。

上沼さん(右)と天童さん

上沼 うーん、記憶が薄れているんですけど、私、そんなことしているんですね。

天童 はっきり覚えていますよ。〈私は歌をあきらめて、姉と漫才でやっていこうと思います。お互いがんばりましょう〉って。お写真も同封してくださったんですよ。

上沼 ああ、そうでした、そうでした!

天童 写真は『のどじまん』の表彰式のもの。私がトロフィーをもらって母と喜んでいる。司会は大村崑さん、恵美ちゃんも写っている。あの手紙、嬉しかったなあ。