草下 いや、さすがにそれはないです。そこで扱っているのを知っている人にだけ、売るんですよね。「今日、チャリンコ(コカインの隠語)入ったよ」とか言って。
これも昔の話ですが、あるスラム街のおでん屋には、特別なオーダーがありました。
──暗号のような?
草下 おでん屋だから、いろんな具があるじゃないですか。その店で、たとえば「はんぺん、はんぺん、こんにゃく、はんぺん」と言うと、覚せい剤が出てくるんです。
──オーダー用の隠語なんですね。
草下 これまでに仕入れたそういうエピソードを、usagiさんがマンガに落とし込んだのが、あのおにぎり屋さんです。
「ヤキ入れは“本気で死ぬ”と思わせろ」
──あと印象的だったのが、紅麗亞さんが「悪い奴の金は奪ってもいい」と言うシーンです。あのコマは凄味がありました。
草下 これは、私が裏社会の人から実際に聞いた言葉です。裏で金を稼ぐ方法は詐欺が圧倒的に多いんですが、その詐欺師達の金を奪う、さらに「ヤバイ連中」がいる。その言葉を紅麗亞さんに言ってもらいました。
あと、紅麗亞さんがシャネルちゃんに「ヤキ入れは徹底的にやれ」と説教するエピソードがあります。あれも本当に聞きました。
──相手に本気で「死ぬ」と思わせろ、というくだりですね。
草下 ええ。これは超武闘派のヤクザの言葉です。中途半端にすると相手に恨まれるから、本気で死ぬと思わせる。そこまですれば、「殺さないでくれてありがとう」と、相手は感謝の気持ちに変わる……という。
そういうゾクっとする部分を紅麗亞さんに言わせているので、裏社会のリアルなテクニックが存分に入っていると思います。