私は、YouTuberとして釣りを「生業」にしている。
釣れた魚のほぼすべてを生食していると言うと引かれてしまうかもしれないが、それだけお刺身には魚本来の旨味、香り、触感を最大限に堪能できる魅力がある。
魚種によって脂の乗り、舌触りの違いを楽しむことで、魚の個性を感じられる。魚の生食文化を進化させてきた日本に生まれて良かったと感じる瞬間でもある。
しかし、生食にはリスクが生じるのも周知のとおり。特に近年注目を集めている「アニサキス」は、魚の鮮度が良ければ万事解決とはいかない厄介な寄生虫だ。今回はお刺身好きの天敵アニサキスとの向き合い方を自身の体験とともに紹介したい。
太平洋側で獲れたサバは…
アニサキスは1~2cmの半透明な線虫で、海洋生物の食物連鎖に便乗して最終宿主であるイルカやクジラに寄生することで最大で3mほどに成長する。我々が目にするサイズは第3期の幼虫であり、完全体には程遠いようだ。しかし、幼虫とはいえ人間に与えるダメージは破壊的で、胃にまで侵入してしまえば文字通り病院送りだ。
オキアミなどを捕食する魚すべてにアニサキスを保持する可能性があるため、近年もっとも恐れられている寄生虫の一つと言っても過言ではない。
東京都福祉保健局が公開しているデータを見ても、平成24年~令和2年までの実績では、サバ、マアジ、ヒラメ、タチウオ、マダイ、メジナなど堤防から釣れる身近な魚までもがアニサキスを保持する魚種に含まれている。
自身の経験ではサバはとりわけ顕著で、太平洋側で獲れた個体はアニサキスがいないと逆に不思議に感じるほど遭遇する。一方、マアジは過去に釣魚を300匹以上、メジナやタチウオも散々食べたが、アニサキスを見つけたことは一度もない。
1年間に報告されるアニサキスによる食中毒発生件数は、2018年からノロウイルスやカンピロバクターを抑えて4年連続トップになった。我々の食生活とは切り離せない関係である(集団感染するノロウイルスの方が患者数はダントツで多い)。
中毒症状としては、生きたまま誤食することで胃や腸壁に刺さり激痛をともなう「胃アニサキス症」や「腸アニサキス症」が挙げられる。症状が出た場合は、内視鏡でアニサキスを摘出しないと数日間は痛みに悶絶することになる。また体内に侵入することでアナフィラキシーショックを引き起こす場合もある。