「しめ鯖」ではアニサキスのリスクは回避できない
殺虫する方法は下記の3点だ(厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」より)。
(1)-20℃で24時間以上冷凍する
(2)60℃で1分、または70℃以上で加熱する
(3)アニサキスに包丁などで外傷を与える
勘違いされやすい方法として酢締め(しめ鯖)が挙げられるが、実はこれではアニサキスのリスクを回避することはできない。しかし、刺身好きには苦渋の選択となるのも事実だ。(1)の方法では冷凍により魚本来の食感が損なわれてしまうし、(2)は焼き魚であって生のお刺身ですらなくなる。
私はどうしても刺身で食べたい……。
特に秋の脂の乗った東京湾のトロサバは、近海イチの“アニサキスハイリスク魚”ではあるが、独特の香りや舌でとろける上質な身は絶品である。
釣魚のサバでも、できるだけ安全に生食できるように独自の検出方法でいただいている。
目視でアニサキスの有無を確認することが重要
アニサキスはもともと魚の内臓に寄生しており、宿主である魚の死後は腹膜を破って筋肉に移るとされている。
これは特に太平洋側で獲れる魚に寄生するタイプのアニサキスにみられる習性で、日本海側の魚に含まれるアニサキスは宿主の死後も内臓に留まるタイプが多いとされる。福岡県をはじめとする九州地方でマサバの生食が当たり前に浸透している理由は、販売店の厳密なチェックに加えて、そもそも身に侵入するリスクが低いことが挙げられる。
では、日本海以外で釣れた魚の場合はどうすればよいのか。ここでは私が個人的に実践している方法を紹介したい(ここからは自己責任でお願いします)。
・釣れたら即エラにハサミを入れ、血抜きをした後にアニサキスの巣窟である内臓を取りだす(筋肉に移行させないため)
・魚をジップロックで包み、氷の入ったクーラーボックスで冷やす(動きを抑える)
・魚をおろした後、腹骨をすいて目視で確認(脂が乗って身が白っぽい場合は、ブラックライトを当てると識別しやすくなる)
・刺身を5mmにスライスする(盛り付け時に再チェックしやすくする)
・いつもより多く咀嚼して飲み込む(これは神頼みに近いという説もある)
私としては、ここまでやって初めてサバを刺身で食べることができるので、厚切りにしてざっと確認して「よし!」では“事故”のリスクは回避できないと考えている。これまで東京湾から太平洋で釣れた生サバを食べてきたが、今のところアニサキスの“侵入”、いや飲み込んでも無症状の場合もあるので“侵略”を許していない。