大宮駅は、埼玉県では最大のターミナルである。
東北・上越・北陸新幹線が乗り入れ、在来線ではJR宇都宮線(東北本線)に高崎線、川越線、京浜東北線もやってくる。JR以外でも東武アーバンパークライン(野田線)にニューシャトル。
JR東日本だけでも1日の乗車人員は実に20万3160人(2021年度)。これはJR東日本の駅では第7位で、すなわち大宮駅は新宿や横浜、渋谷といった並み居るターミナルに並び立つ存在なのだ。
そんなわけで、大宮駅は大いなる存在感を持っている。少なくとも首都圏に住んでいる人にとっては、新幹線で北に向かおうとすればきまって大宮駅に停車するのだから、いやでもその存在を知ることになる。埼玉県でいちばん知名度のある駅といっていい。
「ところが、大宮にはないものがある」
ところが、大宮にはないものがある。埼玉県の県庁舎。それは、大宮ではなく少し南のお隣さん、浦和駅の近くにあるのだ。
2001年に大宮は浦和や与野と合併してさいたま市になっていて、いまではさいたま市が埼玉県の県庁所在地だと教わる。だから大宮にあるとかないとかは広い意味ではどうでもいいことのような気もする。
が、大宮が埼玉県でいちばんのターミナル。だからなんとなく県庁も大宮駅の近くにあるんじゃないか、などと思い込んでしまう。ところがそれはとんでもない勘違い。大宮は鉄道の大ターミナルであったとしても、県庁は浦和。
いったいなぜ、大宮は県庁の置かれる行政の中心ではなく、鉄道の町になったのだろうか。
もともと“分岐”のために設けられた駅だった「大宮」
どうして大宮が鉄道の町かというと、かくのごとくいくつもの路線が乗り入れているということがまず大前提。加えて、このいくつもの路線の中で中核をなす新幹線がちょうど大宮で東北方面と上越・北陸方面へと二手に分かれる。在来線も同様で、宇都宮方面と高崎方面が分かれる根本も大宮だ。
そしてそもそも、大宮駅はこの“分岐”のために設けられた駅であった。