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顔や腕に硫酸をかけられ「ケロイドは元に戻らない。外出が怖い」…被害者男性の“恐怖と苦悩”《白金高輪硫酸事件・初公判》

白金高輪駅“硫酸事件”裁判ルポ

2022/09/21

genre : ニュース, 社会

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 昨年8月に東京メトロ白金高輪駅で大学の後輩に硫酸をかけて重傷を負わせたとして傷害などの罪で起訴された花森弘卓被告(26)に対する初公判が、9月20日に東京地裁(野村賢裁判長)で開かれた。

がっちりした体格に黒色の長袖ジャージ姿を着用

 手錠をかけられ法廷に現れた花森被告は、がっちりした体格に黒色の長袖ジャージを着用。事件当時、防犯カメラに映る彼の姿がしきりに報じられていたが、体格や顔立ちに変化はない。傍聴席を見回し、誰かに会釈していた。

 人定質問のため証言台の前の席に座り、氏名を名乗ったものの、声が小さすぎて聞きとりづらい。裁判長が「もう一度言ってください」と促したが、やはり声は小さいままだ。「マイクを近づけてください」とさらに促した裁判長に、花森被告も応じ、また名乗ったが、それでもささやくような小声だった。

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白金高輪署に護送された大学生の花森弘卓容疑者(当時) ©文藝春秋 撮影・宮崎慎之

 この公判では被害者秘匿の措置が取られ、被害者らの氏名は法廷で明かされず「Aさん」「Bさん」とされた。起訴状によれば、花森被告は2021年8月に白金高輪駅構内で後輩のBさんに硫酸をかけて全治3ヶ月の重傷を負わせた傷害罪と、別の後輩・Aさんに対して同年4月、沖縄県に立地する琉球大学の映画研究会部室において、その両腕を掴み転倒させ、拳で殴ったという暴行罪に問われている。なぜふたりが攻撃されたのか。

 罪状認否で「(間違い)ありません」と被告は小声で応じて起訴内容について認め、弁護人は量刑について審理してほしい旨を述べた。この事件は裁判員裁判ではない。裁判員に分かりやすく伝える必要がないためか、検察官は信じられないほどの早口で書面を読み上げていった。

「興味があるものにだけ熱くなる変わった人」

 冒頭陳述や検察側請求証拠によれば、AさんとBさんは、花森被告が琉球大学農学部2年生の頃に入会した映画研究会の同期。だが学年は、花森被告よりも1つ下だった。

 入会後に花森被告が先輩であることに気づいたAさんは「敬語で話したほうがいい?」と聞いたが「別にいいよ」と言われたため、タメ口で交流していたという。また同期から花森被告は「興味があるものにだけ熱くなる変わった人」だと思われていたのだそうだ。花森被告が強い興味を抱いていたものは、昆虫だった。

 入会した年の夏、AさんやBさんを含む同期らでドライブに出かけた際、途中で車を停めたところ、花森被告が森の中へ入り込み、数時間、昆虫を探し続けた。そんな花森被告を、Bさんが探して連れ戻したことがあったという。