文春オンライン

2022/09/25

生きたまま火葬が“ありえない”納得の理由

 体温が失われていったあとは、死後硬直がはじまる。

 死後硬直はおもに筋肉等によって引き起こされるため、たとえばご年配でかつ長いあいだ闘病されていた方や寝たきりだった方などは筋肉量が少ないので、死後硬直が少ない場合もあるが。

 棺に納められたあとは、ドライアイスを置くことが多い。

 このドライアイスの冷却力はものすごく、数時間も胸の上に置いておくと、その部分がカチンコチンに凍る。もしぼくが生きたまま棺に納められたとしても、このドライアイスによって絶命するだろう。

 さらにそこから数日経つと、いわゆる「匂い」がしてくる。

 身体はどんどん朽ちていくので、これは当然の変化だ。

 そして日本の法律では、基本的に死後24時間経たなければ火葬できない。

 ここまで説明していかがだろうか? 生き返ると思うだろうか?

 必ず全員、とは言えないが、ほとんどの人が「そうだよなあ」と思われたのではないだろうか。

 元火葬場職員の下駄華緒さん ©石川啓次/文藝春秋

火を止めなかったら犯罪

 さらに、冒頭で紹介した動画には、こんな一文があった。

「絶対に助からないので、火葬場職員は気づいても火を止めない」

 ぼくはじつはこれが一番ショックだった。こういうところに、火葬場職員という仕事は「普通ではない」というイメージが世間にあるのだろうということを感じて、非常に悲しくなる。

 現役の火葬場職員ですら、おそらくあまり考えずに「そうなったら止めないかもね」と言う方もいるが、そもそもそんな場面に立ち会うことがないので、単に「たられば」の軽い言葉だ。しかしそれも、ぼくは断固として否定したい。

 もし火葬中に、遺体だと思っていた人がじつは生きていたら……それに気づいたけれども「助からないだろう」と医師でもなく、とくにそのような知識もない人間が勝手に判断してそのまま火葬したならば……。

 それは業務上過失致死に問われないだろうか?

 生きていることがわかっていても、火を止めずにそのまま殺すのだ。