中国政府の見解を補強する作品群
具体的には、中国でコロナ第1波が収束傾向を見せていた2020年3月、南京市の対策の成功を伝える動画を発表したことが契機だ。これに対して、市の党委員会トップの張敬華が竹内を引見し、感謝を表明する。
ほどなく、竹内は2020年6月に武漢市のコロナ復興を描いた長編『好久不見、武漢』、さらに翌年1月には中国がコロナ封じ込めに成功してアフターコロナ時代にあるとする『後疫情時代』など、コロナがらみの作品を続々と発表していった。
当時、中国政府は自国のゼロコロナ政策の成功を内外にアピールし、その理由は中国の社会体制が西側よりも優れているからであるとする主張を熱心におこなっていた。竹内本人が意識していたかはともかく、彼の一連の作品は、いずれも中国政府の見解を補強する内容だった。
月収20万円台の制作会社社員が国民的スターに
結果、竹内とその作品は党と政府によって大々的に賞賛され、彼は中国で全国区の有名人になる。
2021年1月6日には、中国外交部の華春瑩報道官が記者会見で『後疫情時代』に名指しで言及。「中国の取り組みの真実を偏見なく記録した」「竹内監督のような人物が必要だ」と発言するに至った。
かつて日本では、テレビ局の下請け会社のいち社員として月収20万円台(当時の社長談)で地味に働いていたディレクターが、中国共産党による大々的なバックアップのもと、「政治的に正しい」存在として14億人から作品を激賞され続けるーー。
確かに、息子を人民解放軍式の軍事訓練キャンプに放り込んでも構わないと考えるほどには、彼が中国に深い恩を感じていることは間違いない。
「中国を褒める」外国人インフルエンサー続出中
ところで、コロナ禍以降の中国では、竹内のように「中国を褒める」外国人インフルエンサーがやたらに現れるようになった。彼らの称賛は中国の自然や食べ物などに限らず、国家体制やゼロコロナ政策、貧困対策といった政治的な部分も含めて肯定しがちなのが特徴だ。
昨年、香港の人気ウェブメディア『香港01』(2021年7月15日付)が、こうした親中外国人インフルエンサーを大量に紹介する面白い特集をおこなっている。
記事で言及されたのは日本の竹内亮のほか、母国の政治体制やコロナ対策を批判しているアメリカ人男性・Jerry Kowal、BBCやCNNなど西側メディアの中国報道を激しくこきおろすアメリカ人・Nathan Rich(ハンドルネーム「火鍋大王」)やイギリス人父子のLee and Oli Barrettといった面々だ。
いずれも、中国国内の動画サイトで親中国発言を繰り返したり、中国政府の見解に沿ったコンテンツを配信したりしている、西側諸国の出身者たちである。