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2022/10/19

屋敷 伊藤さんの将棋は女流の中でもバラエティに富んでいるほうだから、見ている側は楽しいんじゃないのかな。

伊藤 指す戦法自体にはあまりこだわりはないんですよ。以前は「初手から入玉を目指す将棋」とも言われましたが、自分ではそんなつもりはありません。ただ、先に攻められる展開の将棋が多かったとは思います。今は前より自分の中ではバランスを取っているつもりです。

 

屋敷 女流棋士になってから少しずつ変わっていると思います。奨励会時代は受け身でしたが、女流になってからはバランス重視ですね。昔は手厚く、相手の駒を全部取るような指し方ですが。最近は終盤が鋭くなりました。勝ち方にも幅が出てきて、うまく対応しているでしょう。

「この世界で現状に満足は許されないので、常に上を見ていかないと」

――最後にこれからの棋界でどう戦っていくか、それぞれの抱負をお聞かせください。

伊藤 タイトルを獲った今でも、里見さんと西山さんを追っていく気持ちに変わりはありません。この世界で現状に満足は許されないので、常に上を見ていかないと。そういう気持ちを持って、ようやく現状維持ができるくらいじゃないかと思っています。

 前期でいうと、女流名人戦の前に西山さんにVSをお願いして、快諾いただいたのはうれしかったですね。自分のために時間を作ってくれたこともそうですが、自分と指すことに意味を見出してくれたことがうれしかったです。女流名人戦が終わってからは、西山さんもお忙しい方なのでVSはお休みにしましょうということになりました。

 お二人を目標としつつ、まずは目の前の対局を一つずつ積み重ねて、その先にタイトルがあるのではと思います。力を出し切り、やり切ったと思える将棋を指したいですね。今までにそう思えたのが前期女流名人戦の第2局です。これは勝ったから言えるのかもしれませんが、自分のいいところも悪いところも出し切り、疲れました(笑)。

 

屋敷 私から特別いうことはないんですけど、一局一局大事に指してくれればと。まずは女流名人戦の防衛戦に向けて体調、メンタル、技術の調整をして、照準を合わせて欲しいなと思います。まだ若いし、長い棋士人生のためにも健康に気をつけて欲しいですね。弟子に見せる背中というわけでもないですが、私も長く現役を続けられればと思います。

写真=石川啓次/文藝春秋

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