「戦後最大の人権侵害」とも呼ばれる、“旧優生保護法”。
障害のある人の遺伝子を「不良」として排除しようとした、かつての国の取り組みによって、知らない間に子供を産めない体にされた人たちがいる。苦しみを抱えながら、今も戦い続けている夫婦の声を取材した。

「不妊手術されたこと知らなかった」“将来の子”も奪われ…耳が聞こえない夫婦

大阪府に住む野村さん夫婦(仮名)。台所で手話をしながら料理をしている。2人は耳が聞こえない。20代で結婚してから、50年以上連れ添ってきた。

野村さん夫婦(仮名)*夫は80代、妻は70代:
いただきます!!

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夫・野村太朗さん(仮名)※手話:
おいしいな、おいしい!

妻・野村花子さん(仮名)※手話:
ウーフフフフフ

 

結婚してから約5年後に、待望の第一子を妊娠した。

 

しかし、9カ月がたったころ、病院から赤ちゃんに異常があると言われ、詳しい理由も聞かされないまま、帝王切開で女の子を出産した。

妻・野村花子さん(仮名)※手話:
ずっと自分は入院をしていて、赤ちゃんはどこに連れて行かれたのかが分からなかった

 

夫・野村太朗さん(仮名)※手話:
赤ちゃんが亡くなったっていう知らせがあったんです。それで慌てて行くと、面会もできないっていうふうに言われて。「駄目です」っていう仕草をされて。妻とは面会ができず、別の場所に行くと、赤ちゃんがもう白い包帯に巻かれて亡くなっている状態だったんです

なぜ我が子は亡くなったのか…。家族や病院に聞いても、教えてもらえなかった。

 

2人は、それでも子供が欲しいと心から願っていた。
しかし、何年経っても2人目の子供を授かることはできなかった。

 

妻の花子さん(仮名)には、帝王切開と同時に、不妊手術が施されていたのだ。

夫・野村太朗さん(仮名)※手話:
(子供が)なかなかできなくて、おかしいなと思っていた。年齢を重ねたせいなのかとずっと思っていて、仕方ないと思っていました。不妊手術をして子供が産めない人が他にもいるよということを聞いて、もしかして私たちもそうなのかなと思った