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《観光バス横転》美杉観光バス元社員らが証言する“過酷すぎる労働環境”と“穴だらけの研修制度”「13連勤が月2回。1日19時間勤務のことも…」

genre : ニュース, 社会

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「坂道研修として、運転をほぼしない所長が同乗したことがありました。しかし同乗中に以前の職歴などの雑談が多く、運転に集中できなかったのを覚えています。『あとは経験を積め』と言われて終わりました。20時間もの実技研修なんて受けていませんよ。座学も簡単なDVDを1時間見て、レポートを書くだけでした」(Aさん)

「社長は野口容疑者について『小さい車から乗せた』と言っていましたが、自分がいたときにはそんな対応はなく、2種免許を持っていればすぐに現場に入りました。先輩の車に同乗して、運転できるところは自分でして覚えるという感じです。研修らしい研修で言うと、年に1回の雪山研修くらいでした。今回事故のあった山道の研修をやっているのは見たことがない」(Bさん)

美杉観光バスの本社 ©文藝春秋

キャリア不足の運転手が“高難易度仕事”を担当も

 Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。

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「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」

 長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。

事故発生現場 ©時事通信

「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」

 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。

 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。

「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん)

 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。

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