ドアを全開にした車がアクセルを吹かして渋谷の目抜き通りを走る。後部座席に積んだ大きなスピーカーからはクラブミュージックが爆音で流れていた。自動車の排気ガスを突っ切って、複数のバイクがブンブンと騒々しい音を立てている。沿道のコスプレ集団は聞こえてきた音楽に合わせて「ウェーイ」と奇声をあげ、跳びはねる。即席の野外クラブハウスは乱痴気騒ぎのるつぼになった。

クラブミュージックを流す車にあおられ、踊りだす人々 Ⓒ文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 毎年多くの仮装した若者が訪れ、カオスと化す渋谷のハロウィーン。今年のハロウィーンはコロナウイルスへの危機感の薄れや、入国規制の緩和で外国人観光客が増えたことで、渋谷センター街ではこれまで以上に警戒感が高まっている。渋谷区の長谷部健区長は、10月20日に行った記者会見で、ハロウィーンの際には「渋谷に来る場合はルールを守って」と呼びかけた。

すさまじい人だかり Ⓒ文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

カオスに飲み込まれる渋谷

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 区長の願いむなしく、ハロウィーン目前の29日土曜の夜から、早くもセンター街に人があふれはじめた。露出過多の女性が警官に注意され、ナンパ、痴漢、立ち小便がそこかしこで繰り返されるカオスがやってきたのだった。