ドラマ『少年のアビス』への出演、映画『よだかの片想い』主演など、女優としてますます活動の場を広げる松井玲奈さん。この秋は明治座で幕を開ける音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』に出演する。松井さんはこのオファーを受けて「とても前向きな気持ちでやりたいと思った」と語る。
「明治座さんという歴史のある劇場でお芝居ができることも嬉しいですし、内容も昭和の歌謡界を舞台にした、なんともいろんな出来事が起こりそうな物語。場面が次から次へと変わるので、それをどんな風に見せていくのか、そのなかでどうやってお芝居をするのかというのが楽しみな部分です」
この物語の主人公、中川大志さん演じる歌謡スターの桜木輝彦は、実は戦後の芸能界に君臨する「鳴尾一族」の末っ子。異様な風体から存在を闇に葬られていたが、整形手術の末に絶世の美男子に生まれ変わり、一族への報復を誓う。一方、松井さん演じるレコード会社女社長の蘭丸杏も鳴尾一族に強い恨みを持っており、復讐のために桜木と政略結婚する。
「蘭丸杏は『悪』というイメージが強い女性。脚本を読んだ時点では、あまりシンパシーは感じませんでしたが、演じていくなかで、きっとこの役を好きになるだろうなという予感はありました。彼女の狡猾さ、悪のカッコよさをどこまで出していけるかが私にとっての挑戦だと思っています」
今回の舞台は「音楽劇」というジャンル。松井さんも本格的な歌やダンスに取り組むことになる。
「音楽は生の力がすごくあると思うので、生バンドのなかで歌うことができるのは楽しみですね。ミュージカルが歌のなかで登場人物の感情、思いを分かりやすく伝えるのに対して、今回の音楽劇では、曲は曲として独立していつつ、その曲を歌っている人とどこかでリンクしていると感じてもらえるような表現の仕方ができたらと思います。他の方と一緒に歌う場面もありますし、ソロもあります!」
松井さんが「大きく分ければヒール」と語る蘭丸だが、悪役を演じる上で見せ場は?
「人の心を突き動かすだけのエネルギーをもって挑まないと、まわりを巻き込んで物語を展開していくことができないんじゃないかなと感じています。そして彼女はとにかく出だしのインパクトがすごいので! 出てきた瞬間に、どれだけ気味の悪さを感じさせられるかが大事ですね。観ているお客さんに、『お前の恨み、そんなもんかよ』と思われたら終わりなので、とてつもない情念をもって、最初の台詞を言いたいと思います」
唄と殺しが華麗なる融合を見せるという本作。松井さん演じる蘭丸が殺人に手を染める場面もあるのだろうか。
「(殺人に)関わっているとは思います。あとのことは、観てのお楽しみですね」
まついれな/1991年兵庫県生まれ。15年にグループを卒業後、役者業を中心に活動。18年より執筆活動にも意欲的に取り組み、翌年には短編集『カモフラージュ』(集英社)を刊行。近年の主な出演作は舞台『ジュリアス・シーザー』、映画『よだかの片想い』など。
INFORMATION
舞台『歌妖曲~中川大志之丞変化~』
11月6日~30日 東京・明治座、12月8日~12日 福岡・キャナルシティ劇場、12月17日~25日 大阪・新歌舞伎座にて
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