「4年前の2018年11月、第三者委員会は息子の自殺を『同級生によるいじめが主要因』と認定しました。それなのに、学校側は『論理的な飛躍がある』などと主張し、いじめ自殺を未だに否定し続けているのです。自分たちに都合の悪い調査結果は決して認めない。こんな教育機関がこの世に存在して良いのでしょうか」
そう憤りを隠さないのは、2017年4月に自ら命を絶った長崎市の私立海星高校2年、福浦勇斗くん(享年16、名字のみ仮名)の父大助さん(55)と母さおりさん(50)だ。前代未聞の態度を貫く学校側に対し、2人は11月4日、約3200万円の損害賠償と学校ウェブサイトへの謝罪広告の掲載を求めて長崎地裁に提訴した。
11月9日には、この自殺事件を3年にわたり取材したノンフィクション『いじめの聖域~キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(石川陽一著)が発売。2人は学校側とのやり取りをほぼ全てメモ、録音しており、同書では膨大なデータに残されていた生々しい会話の記録を基に、信じられない不誠実な対応の数々を克明に描いている。その一部を大助、さおり両氏が文春オンラインに明かし、訴訟に懸ける思いを語った。
◆◆◆
「このまま“突然死”ということにしないか」
勇斗くんはいじめを示唆するような内容の遺書や手記を残して亡くなった。自殺現場となった公園で見つかった紙には「家族に迷惑を掛けたくない」との記述もあり、両親に被害を打ち明けることはなかったという。
「自殺の当日まで、特に変わった様子は見せませんでした。悩みに気付けなかったのは、私たち親の責任でもあります。だから、最初から学校や加害者だけを悪者にするつもりはありませんでした。ただ、息子の死と正面から向き合って欲しかっただけなのに……」(さおりさん)
愛する我が子を突然喪い、そんな強烈な自責の念に駆られる両親に対して、当時の武川眞一郎教頭(現校長)は自殺の“偽装”を持ちかける。