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 何も変わらない学校側に見切りを付けた遺族は、私学を管轄する立場の長崎県学事振興課に助けを求めたのだが……。

「当時の担当者だった松尾修参事(現県立高校長)は、私たちに『海星高は遺族の意向を尊重し、真摯に対応していると思う』と言い放ちました。県を交えた学校側との三者での話し合いの席でも、松尾氏は武川氏による自殺の偽装提案を『突然死まではギリ許せる』と追認したのです」(さおり)

「私学は法的に独立性を尊重されているため、行政も手出しできません。たとえそうだとしても、なぜ松尾氏は学校側ばかりを擁護したのでしょうか。おかげで遺族は『自分たちが間違っているのだろうか』という疑念に苛まれ、余計に苦しみました」(大助)

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学校側は「いじめ自殺」認定を拒絶

 県にも見捨てられた遺族にとって、最後にして唯一の希望は第三者委だった。2018年11月、第三者委は約1年4カ月の調査を経て「いじめ自殺」を認定する報告書を完成させるのだが、学校側は内容を不服として受け入れない旨を遺族側に通知。自ら設置した調査機関の結論に従わないという暴挙に出た。

「学校側は報告書がまとまるまでは、『第三者委がどんな結果を出そうとも、それを尊重する』と私たちに明言していました。それなのに、約束を反故にしたのです」(大助)

「第三者委が求めた加害者への事実確認や指導も一切、行いませんでした。武川氏は保護者説明会で『ある人の書いたノートに名前が出ている。それだけで呼んだら人権侵害ではないか』と主張したのです。生きている加害者は守られて、死んだ息子は『ある人』呼ばわり。彼らは大人から何の注意を受けることもないまま、卒業していきました」(さおり)

 学校側のあり得ない対応はまだまだ続く。生徒が学校でのいじめで自殺した場合、日本スポーツ振興センターから遺族に死亡見舞金が支払われる制度がある。学校側はこれの申請を拒んだのだ。

「それどころか、学校側代理人の中川元弁護士(大阪弁護士会)は『損害賠償請求権を放棄するなら、見舞金の申請を考える』と遺族側に持ちかけてきたのです。公的な扶助制度をこんな口封じのための交換条件に使って良いのですか。まるで反社会的なやり口だと感じました」(さおり)