「新人クリエイター」を次々発掘できた理由
“なんと豪華な!”と驚くが、それは32年を経た今の感覚。当時の彼らは新人であり、若手でしかなく、じつは『奇妙な出来事』からの“ご褒美”連投。『奇妙』が深夜でゴールデンほどの予算もなく、著名人やベテランを起用できない、という理由からの実験的起用だった。
ストーリーテラーは斉木からタモリに交代。当時、斉木は石原Pが“ニチアサ”に手がけていた『魔法少女ちゅうかないぱいぱい!』(’89年)等の不思議コメディーシリーズで、クセのある陽気な父親役を好演しており、“朝”のイメージが強かった。
たしかにタモリも同局の『笑っていいとも!』のMC真っ最中で“昼の顔”ではあったが、もともとの芸風の持つ“夜”のイメージから木曜夜8時の枠にはぴったりというか、世界観に合っていた。
つまり『世にも奇妙な物語』は“ピンチヒッターで登場した実験的新人”という出自だったが、それがすべて功を奏した。かつて「週刊少年ジャンプ」(集英社)が少年漫画誌としては後発で予算もなく、ベテラン漫画家に発注できなかったため、本宮ひろ志や永井豪ら才能ある新人を青田買いした結果、トップの座に躍り出、現在の地位を築いた。それと同じことがドラマ『世にも奇妙な物語』でも起こったのだ。
『東京ラブストーリー』で大ブレイクする前の織田裕二の初々しい演技も…
先に挙げた演出家、脚本家をはじめスタッフたちは2022年現在、ほぼ全員が世界的なトップクリエイターとなっている。
出演者もそうだ。当時、旬の新人から演技派の中堅もどんどん抜擢・起用された。ドラマのジャンルも他とは比較にならないくらい幅広い。バリバリのSFから身の毛もよだつホラー、本格サスペンスにスラップスティック・コメディ、やや難解でシュールなストーリー等……。
結果、老若男女問わず幅広い年代と経歴の俳優が大挙出演できるチャンスに恵まれ、ここからネクスト・ブレイクして行った新人や中堅も少なくない。現在最多出演記録を持つ大杉漣さん、永作博美さんとともに2番目の記録を持つ佐野史郎さんなどが好例だろう。
大杉さんは同じ石原Pの『ちゅうかなぱいぱい!』で、パイカルという悪の将校(?)役を演じており、そのご縁もあってのことだろうが、この『世にも奇妙』と北野武映画でブレイク。佐野さんは『世にも奇妙』と並行してTBS系の『ずっとあなたが好きだった』(’92年)の“冬彦さん”で大ブレイクした。
このお二人のような本格派はもちろん、“旬の”俳優が出演するのも本作の魅力だった。中山美穂、織田裕二、桜井幸子、千堂あきほ、内田有紀らリアムタイムで頭角を顕していた新人が続々と主演。