文春オンライン
強盗殺人犯役の織田裕二、ラッパー名人になる中山美穂…『世にも奇妙な物語』はなぜ30年以上も「実験」できるのか?

強盗殺人犯役の織田裕二、ラッパー名人になる中山美穂…『世にも奇妙な物語』はなぜ30年以上も「実験」できるのか?

2022/11/12
note

 フジテレビを代表するアニメ番組が『サザエさん』、『ちびまる子ちゃん』であるとすれば、ドラマの代表は『踊る大捜査線』と『世にも奇妙な物語』ではなかろうか? 十人十色で簡単に絞り込むことなど不可能だろうし、あくまでもオールタイム且つトータル・イメージで考えた場合だが、それだけのインパクトを与えたシリーズであることは多くの方から同意が得られると思う。

映画『世にも奇妙な物語 映画の特別編』完成披露試写会(2000年)

源流は“とある深夜番組”から

 その源流は、とある深夜番組にさかのぼる。1989年10月、フジテレビ深夜で“奇妙な”番組がスタートした。タイトルは文字どおり『奇妙な出来事』。毎回、舞台設定と登場人物が変わる1話30分完結のドラマで、冒頭にはその回の簡単な設定説明や前ふりをする、いわゆるストーリーテラーも登場した。このストーリーテラーは名バイ・プレイヤーの斉木しげるが務めていた。

 お気づきの通り、番組スタイルは『世にも奇妙な物語』と同じだ。この『奇妙な出来事』が話題を呼んだことで『世にも奇妙な物語』が誕生したのである。その前に同スタッフのビデオ・オリジナル作品『フローズンナイト~凍てつく真夏の夜~』(’89年)が存在するが、事実上すべてはこの『奇妙な出来事』がきっかけだろう。

ADVERTISEMENT

 当時大学生だった筆者は、この『奇妙な出来事』に狂喜乱舞した。というのは、もともと『トワイライト(ミステリー・)ゾーン』(’60年)や『ヒッチコック劇場』(’57年)等の外国の1話完結オムニバスドラマが大好きだったからだ。

 和製SF特撮テレビドラマシリーズの『ウルトラQ』(’66年)で、『ウルトラQ』がそれら海外の傑作ドラマシリーズの日本版を狙ったことを大人になってから知り、後追いで観たのだが、見事にハマった。

 だが、特に日本では『ウルトラQ』が『ウルトラマン』(’66年)となり、日本のSF・サスペンス系ドラマは“特撮ヒーロー”に舵を切ってしまう。サスペンス路線自体はテレビ朝日系の「土曜ワイド劇場」や日テレ系の「火曜サスペンス劇場」で後に復活するが、ヒーロー系以外のSF・ホラー系ドラマはすっかり姿を消してしまう。

 そんな枯渇感を感じていた時期だけにかぶりつくように観たが、『奇妙な出来事』は半年で終わってしまった。