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《日本最北端ガンダムマンホール》「この町が好きだからこそ、この町が嫌いでした」おもちゃ屋がない町で生まれ育った公務員の“アニメからの疎外感”

北海道豊富町役場職員インタビュー#3

2022/11/13

genre : ライフ, 社会,

note

「豊富だからダメなんだ…」から叶えた“一生の夢”

──それが重なると、「どうせ今回も、自分の街には来ないんだろう」となってしまいますね。

山形 そうなんです。非常に寂しい気持ちになりまして、その点では豊富町が嫌いでした。

 ですから、いつか豊富にアニメやゲーム文化を誘致したい、何かの形で関わりたい……という気持ちが、私の中にずっとあったんです。

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──では、ポケふたやガンダムマンホールプロジェクトは、渡りに船だった?

豊富町上下水道係のTwitterアカウント。ガンダムマンホールを設置した今年4月から開始した。ヘッダー画像は町のキャラクター「とよとみ君」がガンダムシールドとサーベルを手にしている

山形 はい。夢を果たすべく機会を待っていたのですが、社会人になってこういう企画があり、ご縁をいただけたので、本当に一生の夢が叶ったという思いです。

──役得、という思いはありますか?

山形 いえ、マンホールについては業務の一環なので、私にとってはあくまで「日々当たり前にすべき仕事」のひとつです。

ガンダムマンホール寄贈式に集まった子どもたち 提供/豊富町

 私が子どもの頃に「豊富だからダメなんだ……」と感じた、あの寂しい気持ちを忘れてはいけないと、ずっと思っています。ですから、ガンダムマンホールの関連イベントは今後も続けるつもりです。「豊富でこんな楽しいことがある」という子どもたちの笑顔が見られたら、何よりです。

道北ガンダムとドムが集合した「奇跡の1日」

──今や、マンホール効果で人が集まっていますもんね。

山形 はい。4月に3市町合同でマンホール寄贈式を行ったのですが、マンホール6枚が全て揃う貴重な機会で。平日昼間にもかかわらず、マスコミやガンダム好きの方がたくさん集まりました。

ガンダムマンホール寄贈式に集まった人々

河田 この町の人は共働きが多く、暇してる人が少ないですから、平日にイベントをしても、普通はなかなか集まらないんです。だからやっぱり、ガンダムの力はすごいもんだな、と。

 公務員の仕事は、型にはまりがちですが、自分の趣味が仕事になれば楽しいですよね。もちろん、本来の仕事をきちんとやってこそですが、自分が好きなもの、関心のあるものはどんどん取り入れていいのかなと思います。

ガンダムマンホール寄贈式で挨拶する豊富町長の河田氏。当日はシャア専用不織布マスクを着用した 提供/豊富町

山形 ガンダムマンホールの観光振興成果としては、来町者数も上昇しているんですよ。今年度に入って4か月間の来町者数は、2020年の年間来町者数を超えました。個人的趣味だけではなく、仕事もしているという言い訳として、申し添えます。

《日本最北端ガンダムマンホール》「この町が好きだからこそ、この町が嫌いでした」おもちゃ屋がない町で生まれ育った公務員の“アニメからの疎外感”

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