「精神的なコンディションがぶれると、食道が…」
――ギャル曽根さんとmixiが存在していなければ、名フードファイター“ロシアン佐藤”は誕生していなかった——。ロシアンさんの名勝負といえば、2016年元旦に放送された『国別対抗!大食い世界一決定戦』(日本チームは、佐藤ひとみ、鈴木隆将(MAX鈴木)、もえのあずき、菅原初代)のアメリカとの最終戦です。
ロシアン この試合って、ものすごい反響があったんですよ。たくさんの方から「よかった」と言ってもらえて、ホントにうれしかったです。でも、私だけ優勝したことがないのに、なぜここに……しかも、キャプテンを仰せつかるという。最終戦の相手のパトリックって、完全に仕上げたときは、小林尊さんと同じくらいのパフォーマンスを見せる強い選手だったので、「なんで私なんですか。菅原さんがいいんじゃないですか」って何度もプロデューサーさんに伝えたくらいです。
誰も私が勝つなんて思っていないし、アメリカチームも、「お前なんかが勝てるわけないよ!」みたいな感じだった(苦笑)。でも、そんなことを考えていても、絶対に良い試合なんてできないから、「食べよう。相手はパトリックじゃない、自分を越える」と、そこだけに集中しました。決戦の場はニューヨークのタイムズスクエアで、観衆もたくさんいるんですけど、スーッと意識が入っていく感じでしたね。
――ゾーンに入るという。
ロシアン だったと思います。いつもは「自分が楽しめば」という気持ちなんですけど、世界大会は団体戦。チームの勝ち負けが決まるので、このときほど大食いは楽しむだけじゃない——というのを身に染みて体感できた機会はなかったです。
――大食いって、精神面がとても大切なんですね。
ロシアン すごく大事です。どれだけ体のコンディションを整えていても、精神的なコンディションがぶれると、気持ちで喉がギュッとなります。嫌だったり、くよくよしたりしていると、食道がギュッと締まるんですよ。「やるぞ!」みたいなテンションで向き合うほうが、しっかり食べられますね。なので、勝負での苦手な食材……当時の私の場合は、生の海鮮系なんですけど、ソフトシェルクラブが食材だったときは、開始10秒で「ああ、帰りたい」と(笑)。どんなに持ち直そうと思っても持ち直せない。気持ちが折れると、大食いは絶対に勝てないですね。
写真撮影=釜谷洋史/文藝春秋
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