具体的には、
1 人員削減の必要性があること
2 解雇を回避するための努力が尽くされていること
3 解雇の対象者の人選基準、選定の方法が合理的であること
4 解雇前に、解雇の対象者への説明・協議を尽くしていること
といった4つの要件を満たしているかという観点から判断します。
外資系だからといって解雇のハードルを下げる必要はない
以前は、これらの4つの要件を「4要件」としてとらえ、すべての要件をクリアしていなければ(1つでもクリアしていない要件があったら)、解雇は無効である、と判断されることがありました。しかし、現在の裁判所の傾向は、これら4つの要件を「4要素」としてとらえ、すべての要素の総合判断で解雇の有効性を判断する、というような判断手法を用いることが多いです。
なお、最近、外資系企業における賃金が比較的に高額の従業員については、このような解雇規制や整理解雇の厳格な要件は適用されず、解雇のハードルは低くしてもよいという主張が使用者側からなされることが多いように感じます。その理由としては、整理解雇の厳格な要件は、過去の日本における年功序列制度を前提とした雇用慣行があるから確立したもので、従業員の平均在籍期間が短く、転職の頻度が多く、高い賃金を受領しており解雇されても生活が不安定になりにくい外資系企業の労働者には、妥当しない、という考えです。
しかしながら、解雇規制というのは、雇用関係においては使用者と労働者の力関係に大きな差異があることから、労働契約法で規定されたもので、外資系企業であろうと、日本企業であろうと、適用があるものです。
外資系企業だからといって解雇のハードルを下げる必要はなく、裁判例も、「判断枠組み自体を否定すべき理由はない」として、整理解雇の4要素を総合的に考慮して、労働契約法上の判断枠組みにしたがって判断するべきであると判示しています(バークレイズ証券事件・東京地判令和3.12.13)。
(1)人員削減の必要性について
どのような事情が4要件の判断に重要になるかについては、細かい話になりますので、詳しく知りたい方は、当事務所の弁護士が書いた書籍(『労働事件の基本と実務 紛争類型別手続と事件処理の流れ、書式』日本加除出版)などを参照ください。
ただ、例えば人員削減の必要性に関連して述べると、ツイッタージャパンの経営状況の詳細は不明ですが、報道によると、米Twitter社の2021年12月期の連結最終損益は、2億2140万ドル(約332億円)の赤字だったと言われています。一方で、米Twitter社は、現金及び現金同等物は22億ドル(3200億円)ほどを有しているとのことです。このような状況では、経営危機に陥っているとまでは言い難く、人員削減の必要性までは認められる可能性は低いと思われます。