2022年10月28日、アメリカの実業家であるイーロン・マスク氏は、アメリカの企業であるTwitter, Inc.(以下、米Twitter社といいます)の全株式の買収を完了し、同月31日、同社のCEOに就任しました。
同年11月4日、マスク氏は、米Twitter社の全従業員7500人のうち、半数を解雇したとアメリカのメディアが報じました。ツイッター上では、解雇された従業員が憤りや悲痛な思いを投稿するなどして、全世界をあげての社会問題となっています。報道で確認した限りでは、これほどまでに多くの人員を解雇したのは、米Twitter社の財務体質を強化するためであるとのことでした。
ツイッタージャパンの労働者の置かれている状況は?
マスク氏による解雇の波は、日本法人(Twitter Japan株式会社。以下、ツイッタージャパンといいます)にも及んでいます。報道によると、日本法人のすべての従業員に対し、解雇対象か、解雇対象ではないかが記されたメールが送られてきたとのことです。また、広報部門の全員が解雇や「レイオフ」の対象となったという声も上がっています。
現在、報道では、様々な情報が入り乱れており、ツイッタージャパンにおける従業員にどのような対応がなされているのかの詳細は不明ですが、大量の従業員の解雇に向けたやり取りがなされていることがうかがえます。
日ごろ、労働問題を扱うことが多い弁護士として、ツイッタージャパンの労働者の置かれている状況を見ていきたいと思います。
「退職勧奨」なのか、実際に「解雇」に至っているのか
「解雇」とは、使用者による雇用契約の一方的な解約です。つまり、使用者が一方的に行うことなので、労働者の同意は不要です。一方、話し合いを経て、使用者と労働者の間で、一定の条件の下で、退職することを合意する場合もあります。これを「合意退職」などといいます。
ツイッタージャパンの従業員の方の中には、「レイオフ」という言葉をSNS上で用いている方がいます。本件では「合意退職に向けた話し合いなどの期間」という意味合いで使われているようですが、使用者から退職を促されるということで、「退職勧奨」と言ったりもします。
現在は、そのような話し合いがなされているという情報もあり、実際に解雇にまで至っているかどうかは不明です。一方で、「解雇された」という言い方をしている方もおり、実際に解雇にまで至っている可能性もあります。
ここでは、仮の話にはなりますが、ツイッタージャパンにおいても11月4日に突如解雇をするとのメールが送付されてきたという場面を設定して、そのような場合に生じる労働法上の問題についてみていき、併せて、合意退職に向けた話し合いをする場合の注意点も考えたいと思います。