――筋トレを行うにしても、闇雲にやっているだけでは、逆効果になるということですね。
森岡 当時からフィジカル強化についての知識を持つ選手はいたと思います。でも僕はそこの知識が足りなかった。性格を変える必要もあったのかもしれないけれど、そこを変えてしまえば、自分ではなくなってしまうので。
「20代の頃は気取ってスマートに見せたいという思いもあった」
――自分を追い込んでしまうという性格は子どものころからあったのでしょうか?
森岡 そうですね。何かに抗う精神力はあったと思います。僕の実家は高台にあって、家の周囲はどこも坂道だらけなんです。そこで自転車に乗っているときも、絶対に途中で足をつきたくない。立ちこぎで足をつかず家に帰りついたときの喜びが格別で。大人になってからのランニングでも上り坂のほうが好きなんですよね。
――トルシエジャパンの“フラット3”という守備戦術のリーダーでもあった森岡さんには、スマートなインテリジェンスを持った選手というイメージがあると思うのですが、結構泥臭い子ども時代だったのですね。
森岡 20代のころは気取っていた部分もあったので、スマートに見せたいというのもあったと思います(笑)。心のなかでは「絶対に守ってやる」という強い気持ちを持っていても周囲にそれを公言するのは、ちょっとカッコ悪いなというのがあったと思います。同時に、僕の個性、強みの一つとして、守備の部分で強さが足りないなら、賢く守るというのは大事にしていました。足が遅いなら賢く、うまく守るしかないので。
――身体能力で劣るなら、頭を使うということですね。
森岡 どうしてそうなったかを思い返すと、僕は子どものころから体が弱くて、アレルギーの体質改善も行いました。でも、高校に入ると貧血で目の前が紫になって倒れたことも。アスリートとしての身体能力以前の段階での身体の弱さがあったんです。引退を決意した年の夏も練習中に熱中症で倒れて、気がつくと口の周りに塩が盛られていたこともありました。
――基礎体力的な面での課題があるにも関わらず、あるからこそ、「もっとやらなくちゃいけない」と自分を追い込んでしまうのでしょうね。