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一部メディアが、遺族の承諾なしに「実名公表」

 そんな中、14日には、進歩系の市民メディア『タンポポ』とYouTubeチャンネル『ザ探査』が犠牲者158名のうち155名の実名を遺族の承諾なしに公表した。実名公表は野党「共に民主党」の李在明代表も主張しており、9日には、「世の中で起きた惨事で名前も顔もない場所で全国民が焼香し哀悼をするのか」と切々と語り遺族同意の上で犠牲者の実名と写真を明らかにすべきだと訴えていた。

 その2日前には野党のシンクタンク「民主研究院」の副院長が「あらゆる手段を動員しても犠牲者全員の名簿と写真、プロフィールを確保して党レベルで発表し、追慕の空間を準備することが急務」というメッセージを野党議員に送った画面がカメラに捉えられ、物議を醸してもいた。

現場近くの梨泰院1番出口の階段の壁には追悼の付箋が日を追うごとに増えている(筆者提供)

 実名を公開した『たんぽぽ』代表は、「名前を口にするのが哀悼の始まり。いちメディアとして犠牲者の名前を広く知らせる目的で、遺族の悲しみを社会が共に背負うのに役に立てば」(中央日報、11月15日)と語ったが、「公開されれば家族を失った方々がどう思うか、まったく考えもしない、話にならない行為」(東亜日報、11月15日)と憤りを露わにする遺族や「中学生の妹が学校でいじめられないかと思って誰にも娘(姉)の話をしていなかったのに……」(国民日報、同)とつぶやいた遺族もいた。抗議があったのか、翌日『たんぽぽ』は一部を匿名に変えている。

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 野党「共に民主党」は遺族の承諾なしに実名を公表したことに遺憾を示し、進歩派の「正義党」代表も、「犠牲者の名前を公開することは遺族が決めること。むごい」と批判した。