歌舞伎町・新宿東宝ビル横の広場などに集う少年少女たち、通称“トー横キッズ”。その真横に、広場を見下ろすようにそびえ立つ48階建てのビルがある。来年4月にオープンするこのエンタメ複合施設「東急歌舞伎町タワー」には映画館やホテルが入る予定だ。この施設の開業によって、キッズの居場所が減っていくのではないかと予想する声もある。新宿区役所の男性職員が語る。

「トー横広場では週末にライブなどが行われることが多かったのですが、コロナ禍で頻度が減り、その空いたスペースにキッズがやってくるようになりました。トー横キッズたちによる治安の悪化に警察も行政も手を焼いてきましたが、公共スペースなので無理に追い出すのも難しい。しかし新しい商業施設ができることでイベントの機会が増えれば物理的にたまり場が消え、キッズが減るのではないかと期待する人もいます」

トー横広場ではイベントなどが開催されることも多い

 トー横広場では、11月15日に死亡が伝えられた“ハウル”こと小川雅朝被告(33)を代表とする「歌舞伎町卍会」が大きな存在感を持っていたが、小川被告の逮捕を機に解散。現在の広場では、DVや虐待の相談にのる公益社団法人「日本駆け込み寺」のメンバーが緑のノボリをもってゴミを拾ったり、仁藤夢乃さん(33)が代表を務める一般社団法人「Colabo」が駆けつけるなど、支援を掲げる組織が複数活動している。

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Colabo(ホームぺージより)

「すぐに薬物や売春、詐欺といった“非日常”にアクセスできてしまう」

 トー横キッズを対象にした防犯ボランティア団体「オウルxyz(オウリーズ)」もその1つ。卍会が解散した後の今年8月に活動を始め、警察や行政と連携してキッズへの食事支援や、キッズの親の悩み相談、家出人の捜索などを行っている。団体メンバーの30代男性が話す。

オウリーズのツイッターアカウント

「他に居場所ができればすぐに来なくなるので、キッズは3~4カ月ぐらいで続々とメンバーが入れ替わります。彼らの中には、児童相談所に保護された経験を持つものが多い。家庭や施設での不自由な生活が嫌でトー横に来るのですが、歌舞伎町には彼らを犯罪の道に誘う大人も多く、深刻なトラブルに巻き込まれる例が絶えません。以前であれば夜中に田舎のコンビニの前で溜まっているくらいだった子が、トー横広場ではすぐに薬物や売春、詐欺といった“非日常”にアクセスできてしまうことに問題があるんです」