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舞妓らを悩ませたお客さんとの“ご飯食べ”

 一方で、いざ夜になって仕事へ繰り出すと食べきれないほどの食事を前にすることもあるのだという。

「舞妓のお仕事には、 “ご飯食べ”というお客さんとレストランや料亭でご飯をいただく、キャバクラさんでいう“同伴”のようなものもあります。ご飯食べが1日に2件入っていれば、フレンチのコースをいただいた後にフグ料理のコースをいただく……というようなことも起こりうる。もちろん、残すことは許されないので一生懸命食べるのですが、苦しくて吐いてしまうこともありました。

 贅沢な話ではありますが、いくら高級料理でも満腹の状態で食べたら味なんてしません。結局、唯一自分の好きなものを食べられる休日に買い求めるのはコンビニのお弁当やカップラーメンでした。舞妓はかぶりつくことが禁止されているので、髪を結っているときはおにぎりも指やお箸で割ってから食べなくてはなりません。休みの日に何も気にせず、コンビニで売っている三角形のおにぎりにかぶりつく瞬間は幸せでした」(桐貴さん)

舞妓だった頃の桐貴さん。手にお猪口を持っている(桐貴さん提供)

「急激に痩せてしまうか、太ってしまうかのどちらか」

 修業中の身とはいえ、まだ10代の少女。成長期の大切な時期に適切とは言い難い食生活を送ることで、心と体の健康を蝕まれてしまう舞妓も少なくないのだという。

「極端な食生活なので、急激に痩せてしまうか、太ってしまうかのどちらかが多いのです。私は食べては吐いてを繰り返して激やせしましたが、太ってしまったことでお母さんから『肥えている』と嫌味を言われ続け、拒食症になってしまったお姉さんがいました。そのお姉さんはまかないもお客さんにいただいたお食事も、全部吐いてしまうようになり、唯一口にできるドラッグストアなどで売っている離乳食を大量に買い込んでいました。とても痛々しくて、見ていられませんでした」(桐貴さん)

舞妓だった頃の桐貴さん(桐貴さん提供)

 元舞妓のAさんも苦しそうに当時を振り返る。

「私の置屋のお母さんは食事を出すとき、毎回必ず『豚の餌ができたえ』と言ってテーブルに皿をバンと叩きつけるように置くんです。置屋で飼っている犬にあげる予定だった鶏のささみ肉を食卓に出されたこともありました。犬の方が私よりも身分が上でしたので、犬に三つ指ついてご挨拶をするように言われることも……。

 お母さんの作るごはんを身体が拒絶して、食べられなくなってしまって。どんどん痩せ細っていくのに、毎日豚と言われるので、もっと痩せなきゃと思い込んで筋トレをして……。あの時は死を考えてしまうほどつらかったです」

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