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2023年の論点

「主流メディアはもう信じない」……ニッポンでは報じられないジョニー・デップ(59)裁判が炙り出した“アメリカの問題点”

「主流メディアはもう信じない」……ニッポンでは報じられないジョニー・デップ(59)裁判が炙り出した“アメリカの問題点”

2023/01/09

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, ライフスタイル, ヘルス

 たしかに、この判決は、DVに苦しむ女性に悪い影響を与えるかもしれない。しかし、それはデップではなくハードのせいだ。ハードが全世界に向けてデップからDVを受けていたと証拠の捏造までして主張したことで、ほかの被害女性たちも「嘘を言っているのでは」と思われるかもしれないのである。それでも、主流メディアは絶対にそこには触れない。

 もっとも、そうしなければいけないメディア側の事情もある。彼らは最初からハードの嘘を鵜呑みにし、茶番にしっかり乗っかるだけでなく、その手助けまでしたのだ。たとえば、「ピープル」誌。デマを平気で書くゴシップ誌と違い、この芸能雑誌は信頼がおける。そんな彼らが、ハードが作成した、顔にあざがある写真を表紙にして、デップによるDVを全世界に伝えたのである。

そして作り上げられたウソの報道

 そして、今回の裁判の焦点であるハードの意見記事を掲載した「ワシントン・ポスト」。DV被害者としてハードが執筆したこの記事にデップの名前は出てこないが、それが誰のことかは明らかで、デップは訴訟に踏み切った。しかし、これは、二重三重の意味で、「ワシントン・ポスト」にとって恥である。

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 まず、この記事はハードが書いたものではなく、ハードがデップとの離婚で得たお金を寄付すると約束した非営利団体、アメリカ自由人権協会(ACLU)のスタッフが書いたものだった。彼らは自分たちのアジェンダをプッシュする手段として、デップという大物スターにDV被害を受けたというハードを使い、紙面枠を確保したのだ。

 さらに、掲載時期にはハードが出演する「アクアマン」が公開されるタイミングを狙っている。「女性たちのために闘う勇気ある女優」のイメージがつくのは、ハードにとって都合が良い。つまり、これは、ハードとACLUの共同宣伝プロジェクトだったのである。

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