たしかに、この判決は、DVに苦しむ女性に悪い影響を与えるかもしれない。しかし、それはデップではなくハードのせいだ。ハードが全世界に向けてデップからDVを受けていたと証拠の捏造までして主張したことで、ほかの被害女性たちも「嘘を言っているのでは」と思われるかもしれないのである。それでも、主流メディアは絶対にそこには触れない。
もっとも、そうしなければいけないメディア側の事情もある。彼らは最初からハードの嘘を鵜呑みにし、茶番にしっかり乗っかるだけでなく、その手助けまでしたのだ。たとえば、「ピープル」誌。デマを平気で書くゴシップ誌と違い、この芸能雑誌は信頼がおける。そんな彼らが、ハードが作成した、顔にあざがある写真を表紙にして、デップによるDVを全世界に伝えたのである。
そして作り上げられたウソの報道
そして、今回の裁判の焦点であるハードの意見記事を掲載した「ワシントン・ポスト」。DV被害者としてハードが執筆したこの記事にデップの名前は出てこないが、それが誰のことかは明らかで、デップは訴訟に踏み切った。しかし、これは、二重三重の意味で、「ワシントン・ポスト」にとって恥である。
まず、この記事はハードが書いたものではなく、ハードがデップとの離婚で得たお金を寄付すると約束した非営利団体、アメリカ自由人権協会(ACLU)のスタッフが書いたものだった。彼らは自分たちのアジェンダをプッシュする手段として、デップという大物スターにDV被害を受けたというハードを使い、紙面枠を確保したのだ。
さらに、掲載時期にはハードが出演する「アクアマン」が公開されるタイミングを狙っている。「女性たちのために闘う勇気ある女優」のイメージがつくのは、ハードにとって都合が良い。つまり、これは、ハードとACLUの共同宣伝プロジェクトだったのである。