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〈M-1審査員引退〉出演者への毒舌、極端な点数…自宅で取材してわかった、上沼恵美子の言動の“真意”

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『女芸人の壁』出版記念 西澤千央×能町みね子対談 #2

genre : ライフ, 社会

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 それは、我々自身もいろんなところで孤立させられてきたというか、女性誌を開けば「女が嫌いな女はこれだ」って企画があふれていたり、「そうだよね、女ってこういうとこあるよね」って女性たち自身が思い込まされてたところもあると思うんですけど。

能町 それもあるし、これで笑わなきゃいけないんだ、みたい無意識のしばりがだんだんなくなってきてるのもあると思います。  あの時「これ嫌だな」って思ったのはそんなに間違ってなかったんだなって、さかのぼって思ったりするんですよね。

3回戦の動画を全部見てわかった「今、ウケないネタ」

能町 M-1の話に戻るんですけど、私、今年は3回戦の動画を全部見るってことをやってました。 申し訳ないですけど、1分ぐらい見て飛ばしちゃったコンビも一部います。でも、一応全組見てはいる。

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 それをやって思ったのは、3回戦くらいだと、まだモラル的にピリッと来るネタが残ってるんです。あ、なんか引っかかるっていう。

 特に目についたのは、男2人が、好きな子にどうやってアタックしたらいいか的な感じのところから、男がストーカーチックになっていくベタなネタ。そのストーカーぶりを笑うんですけど、こっちとしてはちょっと笑えない、みたいな。マジであるやつじゃん、ってうっすら感じちゃって。

西澤 怖い、みたいな。

能町 そう、それ本当に怖いやつだから、って思っちゃう。あとは、「モテない、女が欲しい」的なところからネタが始まるとだいたいセクハラ風な話が出てくるので、私は「ああ〜、またか」ってなっちゃいます。1人を女の子に見立てて、セクハラ的なことをしていくとかも。ただ、そういうのはだいたい3回戦でちゃんと落ちるんですよね。 

 別にセクハラだからって審査員が落としてるわけじゃなくて、やっぱりウケないんですよ。お客さんが「セクハラだ」とか思う以前の問題として、「古っ」て感じてるのがわかる。 

西澤 それで言うと、わざとコンプライアンスに引っかかりそうなことを言って、ツッコミがいさめるっていう、「最近はこういうこと言っちゃいけないんですよね」みたいな形で笑いを取ろうとするネタも、3回戦で落ちてました。その構図ももう、古く感じられちゃうんでしょうね。

 結局、2020年のミルクボーイのネタの「コーンフレークは生産者の顔が見えない」みたいな、普遍的なものが上がるんだと思います。