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上沼恵美子が、M-1に対して示していた“懸念”

ーー配信参加の方から質問がありました。「今回のトークイベントのタイトル(『テレビと女芸人と上沼恵美子』)で、『女芸人』と『上沼恵美子』をあえて分けた意図を教えていただきたいです」。

西澤 今まで連載で取材した11組の中では、上沼さんはやっぱりちょっと異色なんですよね。上沼さんって圧倒的に孤独ではあるんですよ。でも、その孤独を自信がすべて凌駕しているんです。彼女の持っているパワーみたいなもので、孤独をさらに燃料にして突き進むというか。そういうパワーみたいなものは、上沼さんが一番でした。

能町 女芸人の壁』には「上沼恵美子論」というコラムが載ってるんですけど、それを読んで私はすごく納得した部分がありました。

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 ウェブ上に掲載されたインタビューを読んだとき、前半の上沼さんの人生の話には、気持ちも入ってはいるけど完成されたパッケージになっちゃっている感じもあって、真意がつかみきれない感じはしたんです。ただ、お笑いの話に入った時だけ、ちょっと素が出たというふうにコラムに書かれていて、なるほどなと。

 インタビューはご自宅に伺って?

西澤 伺いました。すごいお宅で。日本中の胡蝶蘭がここに集まってたのかっていうくらい、胡蝶蘭がありました。

能町 すごい(笑)。それなら、本当にほぼ大阪城ですね。

西澤 ほんとに。それで、お茶とお菓子の説明をしてくださって、すごくもてなしてくださる。取材者というより、東京からはるばる観客が来た感覚だったんだと思います。こちらとの間にしっかり線を引いて、「これから話すから、そっちで聞いてらして」という感じ。 しゃべりがまったくよどまないので、こちらから質問がなかなかできない。

 でも、後半、2021年のM-1で審査員としてハライチに高得点をつけたお話あたりから、それまで古典落語みたいにお話しされていたのが、急にちょっと熱がこもるというか、言いよどんだりとかがありました。

能町 M-1は競技化しすぎなのではないか、という話でしたね。私もそれは分かる部分があるんです。好きではあるんだけど、もっと気楽に見たいってたまに思うんですよね。こっちは見て楽しむ側のはずなのに、「今日客席の空気が重いな、大丈夫かな」とか、考えなくてもいいことを考えちゃう。

西澤 そうそう。「トップバッターだとやっぱりちょっと厳しいかな」とか、変なこと思っちゃいますよね。

 おそらく、上沼さんの中では、漫才はあくまで人を笑わせる演芸なんですよね。審査員席での言動も、極端な点数のつけ方も、そう考えると納得いくんですよ。審査員もM-1の演者のうちの1人だと考えていて、演者としてM-1をおもしろい番組にしたいと思っていたからこその言動で。視聴者はそれを見て「芸人の一生がかかってるんですよ!」と怒るわけなんですけど。