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 ただ、以前THE Wのプロデューサーにインタビューしたときに、私も似た質問をしたんですよね。そこで初めて知ったこととして、現在も続けているかどうかはわからないのですが、THE Wは過去に何度も劇場を借りて、女性芸人のライブを主催しているんです。

 そうやってライブの機会が増えることで、女性芸人がネタをブラッシュアップできたり、女性芸人同士のネットワークが生まれたりと良い影響がいろいろあったらしくて。THE W決勝前の記者会見を見ても、出場コンビがお互いに知り合いで、それぞれツッコみあったりしていて。

 女性芸人は孤立していた時代が長かったので、その光景を見たら、THE Wの功績は確実にあるんじゃないかなと。あとは、あのチョウチョのシステムだけなんとかすればいいんだと思います(笑)。

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自分の中の偏見をどう変えていくか

ーー自分は今18歳なのですが、お二人はジェンダーに対する価値観が変わったきっかけはありますか? 自分にも偏見があるとしたら、変えていきたいなと思うので。

西澤 うーん。でも、私も今でも間違っているところは間違ってると思うんですよね。自分に偏見がないともまだまだ思えないというか。

能町 昔よりはよくなってはきてるけど、ずっと変化し続けている感じはしますね。何かをきっかけに価値観が悪から善に裏返ったわけではなくて、ずっとちょっとずつマシになっていく感じだと思います。10年後に今日の自分のトークとか聞いたら「うわぁ〜」って思う可能性もあるし。 

西澤 「まだ女芸人とか言ってるの?」みたいな感じかもしれない。

能町 本当に徐々にだから、自分でもわからないと思うんですよ。

 この間「アメトーーク!」をつけたら、何年か前の放送をその時出演したメンバーで見返すコーナーがあったんですけど、今見るとそのトークが信じられないくらい下品なんですよね。風俗行ってどうとか、女遊びがどうのとか、そんな話ばっかりしてるんです。

 で、びっくりしたのが、そのトークをしてた本人たちも、VTRの過去の自分のトークを聞いてちょっと引いてるんです。笑いにもしづらそうな空気になってて。だから、全員ちょっとずつ変わってるよねって、そのとき思いました。 

西澤 これはオッケー、これはアウトって明確な線を引きたくなる気持ちはみんな持ってると思うんですけど、結局おそるおそるやっていくしかないんだと思います。「これってどうなのかな」って自問自答しながら。それはもしかしたら、ネタを作ってる芸人さんたちもそうなのかもしれませんね。

女芸人の壁

西澤 千央

文藝春秋

2022年11月9日 発売