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「良いものを作ってもなかなか売れない」をどうすればクリアできるのか

 小規模な事業者では、良いものを作っていてもなかなか売れないという課題を抱えていることがしばしばだ。そこには、パッケージデザインなどを含めた商品を手に取ってもらうまでのコミュニケーションギャップや、流通ルートや価格帯などの流通ギャップなど、いくつかの要因がある。

「たとえば、食品は試食してみてはじめて良さがわかるというところがありますが、そのためにはまずパッケージなどで商品の良さを伝える必要がある。また、本当はスーパーでよく売れるのに百貨店に営業に行っていたりとか、そうしたギャップがあるんです。もちろん、ご夫婦だけでやっているのでなかなか余裕がないというケースも。

 そこで、私たちがデザインや商品流通の専門家をアサインして事業者さんにアドバイスをしていただく。そうして商品開発を行ってきました」(安藤さん)

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 加えてこのプロジェクトには中国経済産業局や地域の商工会議所、金融機関などもサポーターとして参加している。経営のノウハウの課題も、サポーターの力によって得ることができるというあんばいだ。

 2020年から2021年にかけては第1回、そして2022年に入って第2回のてみてプロジェクトが展開されてきた。第2回のプロジェクトでは10の事業者が参加して商品を開発している。完成した商品をエキエで販売することも、このプロジェクトの特徴のひとつだ。

「商品開発事業って、一般的に商品ができたあとは商談会をセッティングして終わってしまうんです。ただ、それが即取引につながるかというと結構ハードルが高い。そこで、我々はエキエで売るという場も合わせて用意しました。これについては、JR西日本だけでなく、小売業も行っているグループ全体の力を存分に利用させてもらっています」(安藤さん)

「あれは海水をただ炊いただけですよね」からの“塩”づくり

 このプロジェクトの中で生まれた商品のひとつが、山口県は周防大島にある合同会社龍神乃里が生み出したクラフトソルト「凪塩」だ。

 

 周防大島は1970年代まで塩田があった塩作りの島。ただ、半世紀以上塩作りの伝統は途切れていた。それを蘇らせたのだ。

 工房の目の前にある瀬戸内海の海水を汲んで、それを煮詰めて成分を調整して塩を作る。料理人でもある村上雅昭代表と、実際の塩作りを担う松田昌樹生産部長がタッグを組んで、2017年から塩作りを続けてきたという。

「ただ、最初はふたりとも塩作りに関してはずぶの素人ですから。ドラム缶で塩を炊いて、こびりついた塩を持ってクラフトソルトの専門家に見てもらったら、『あれはただ炊いただけですよね』と、こう言われまして……。

 そこから、とにかく本当においしい塩を作ろうと塩作りの理論から学びながら、ですからね。それはそれは大変でしたよ。ようやく『これでいけるかも』と思ったのは、3年前の6月頃でしたか」(村上さん)

 試行錯誤の末に納得できる塩が完成。さらに成分を調整して、肉や刺身など、用途に合わせた塩を作ることにも成功した。