めでたし、めでたし…ってこれ、正直儲かってるんですか…?
こうして生み出された商品は着実に知名度を上げ、プロジェクト後の展望も開けてきた。実際、すでにプロジェクトが終了している第1回参加事業者も、10社中8社までがプロジェクト前から売り上げがアップ。さらに半分以上までが過去最高の売り上げを達成できたという。
てみてプロジェクトへの参加はきっかけにすぎないが、そのチャンスを活かすだけの商品力が、もともとそれぞれの事業者にも備わっていたということなのだろう。
ただ、ここで気になることがひとつ。JRさんは、このプロジェクトで“儲かって”いるのだろうか。地域共生を理念に掲げているとはいえ、民間企業であるからにはボランティアとはいかないはずだ。それに、コロナ禍以降JRさんの経営も厳しさを増していると聞くが……。
「そこはひとつの課題なんです。一気に稼げるようになる事業かというと、まったくそうではないというのが正直なところ。
ただ、我々の取り組みを知っていただいた自治体や企業などからの相談件数は増えており、地域のソリューションビジネスとしての側面でも可能性を感じています」(安藤さん)
それでも、このプロジェクトを進める効果は小さくないと、安藤さんは熱を込める。
「最初の理念は、良い商品があるからたくさんの人に来て欲しいという、そこではじめたんです。そこからグループ全体にどれだけプラスアルファがあるかというところ。
良いものをつくっているが売れないといった課題を抱えている事業者様をサポートして稼げる事業者が増え、商品を通じて地域のファンが増えていくことで、結果として当社グループ全体で収益的にもプラスになっていくだろう、と。そう思っています」(安藤さん)
地域の衰退は鉄道会社にとってダイレクトに収益に響く。ただ、それを簡単に克服する手段はない。ひとつひとつのプロジェクトで大きな収益を得ることを目的にするのではなく、未来の地域の活性化。それが巡り巡ってグループ全体の収益にもつながってくる、ということなのだろう。
わかりやすく派手な地方創生事業もあっていい。しかし、地方の衰退を少しでも食い止めて、地域経済の活性化のためには、こうした“すぐには儲からない”取り組みをひとつひとつ進めていくことが、いちばん大切なのかもしれない。
写真=鼠入昌史
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