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阿部寛「育ててくれた両親を思い出させてくれる物語」

映画『祈りの幕が下りる時』――クローズアップ

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 累計1200万部のベストセラーが原作の「新参者」シリーズが、いよいよスクリーンで大団円を迎える。刑事・加賀恭一郎は、ご存知、俳優・阿部寛さん。ドラマや映画で8年前から演じてきた。

「原作者の東野圭吾さんは、『加賀恭一郎は自分だ』とおっしゃっています。原作での加賀は物腰が柔らかくて、犯人に捜査のプレッシャーを与えない。いつの間にか事件が解決してまわりを驚かせるような存在で、東野さんのように知的です。映像シリーズでは、笑える部分を加える工夫をしました。加賀のキャラクターを確立するまでは、結構、苦労したんです」

 いまや、物語の舞台となる日本橋を歩いていると“加賀さん”と声をかけられるほど。

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「人形焼きのお店の方とも顔なじみです。今の仕事を失ったら、あそこに行こうかと考えています(笑)」

 いつもはどことなくユーモアただよう加賀恭一郎だが、今回は母親との複雑な関係が明かされる。

「今まで見せなかった加賀自身の源の部分です。TBSドラマ『下町ロケット』でご一緒した福澤克雄さんがこの映画の監督を務められたのですが、彼なら何を足したら面白いのか判断し、新しい風を吹き込んでくれると確信していました」

 加賀の母親のみならず、とりまく女性陣がそれぞれ物語の大きな鍵を握る。

「松嶋菜々子さんはじめ女優さん達がこの作品をよりミステリアスに魅力的にして下さった。試写を見て凄く切ない気持ちになりました」

 作中には「俺は強烈なマザコンだ」というセリフがある。

「福澤監督が『マザコンというセリフを加賀に言ってほしい』と。母親役の伊藤蘭さんとは、テレビドラマデビュー2作目の『花嵐の森ふかく』で共演して以来、30年ぶりでした。一緒に撮影するシーンはなかったのですが、母親役としてキャスティングが決まったときは嬉しかったです」

 阿部さん自身の親子関係は作品に影響を与えているのだろうか?

「僕自身の話ですか? 母は社交的で教育熱心でした。父は背中で生き方を見せるような寡黙で優しい人。昭和一桁世代だけど、決して厳しくはなく、何不自由なく教育を受けさせてくれた親でした」

©2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

 この作品は、誰もが自分の親子関係を振り返りたくなる、郷愁を感じる作品に仕上がっている。

「物語には極悪人は出てきません。普通の人でも、ふとしたことで犯罪に巻き込まれてしまうという現実がある。切ない犯人像を描いていると思います。シリーズ最後にふさわしい重厚な見ごたえのある作品になりました。僕は、出来上がりにすごく満足しています」

あべひろし/1964年、神奈川県生まれ。1983年モデルデビュー、1987年俳優デビュー。1993年つかこうへい作・演出の舞台で脚光を浴びて以降、俳優として第一線で活躍している。代表作はドラマ・映画『トリック』シリーズ、映画『テルマエ・ロマエ』、ドラマ『下町ロケット』など。

INFORMATION『祈りの幕が下りる時』

1月27日(土)全国東宝系公開。
http://inorinomaku-movie.jp/

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