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『私のグランパ』で石原は珠子という中学生を演じ、刑務所から13年ぶりに戻ってきた祖父(菅原文太)とさまざまな騒ぎに巻き込まれながらも関係を深めていく。石原はどうやって珠子を演じればいいか東監督に訊いたところ、「石原さとみを選んだんだから、石原さとみのままやれば、それが珠子になるんだ」と言われた。おかげですっと役に入れたという(『PaUSE』2003年5月号)。劇中では、普段はおとなしい珠子が、いじめっ子たちを前に豹変し啖呵を切るシーンも印象深い。東からは、「もっと低い声で。ただ叫んでいるだけじゃだめなんだ」と指導されたというだけあって凄味が効いていた。

(左から)石原さとみ、子役の稲垣来泉。映画『そして、バトンは渡された』で共演 ©文藝春秋

 一方、祖父役の菅原文太はさりげなくアドバイスをくれるという感じで、《一点を見つめて演技しちゃう私に、そこはグルリと見渡すのが本当だよ、と言って下さったり。“スタート!”の時、何で一歩後から歩き始めるのかなって思ったら、私の歩幅に合わせてくれるためだったり》と、彼女は大御所俳優の気遣いに感銘を受けたようだ(『PaUSE』2003年5月号)。菅原からは「いつまでも変わらないでね」と強く言われたという。

朝ドラ出演でついにブレイク

 石原は映画やドラマ以前に、携帯電話キャリアのJ-フォンのCMで受験する兄に応援メールを送る妹を演じ、顔を知られるようになっていた。J-フォンのCMには同時期、別のシリーズに彼女と同い年の上野樹里が出演しており、雑誌で対談もしている。ちょうど連続ドラマへの出演が決まったばかりだった石原が、すでに連ドラ経験を持つ上野におずおずと「どんな感じですか」と訊ね、「映画はゆっくり撮るんだけど、ドラマはペースが早くてね」と助言されているのが、何だかほほえましい(『CM NOW』2003年5月号)。

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©文藝春秋

 2人はこのあと、2003年9月より半年間放送されたNHKの連続テレビ小説『てるてる家族』で共演する。このドラマの原作は作詞家・作家のなかにし礼が自身の妻の4姉妹をモデルにした小説『てるてる坊主の照子さん』で、主演の石原は末っ子の四女・冬子、上野は三女・秋子を演じた。舞台となったのは昭和20~40年代の大阪・池田で、製パン店と喫茶店を営む両親のもと、姉妹がそれぞれの道を歩んでいく。

 秋子と冬子は歳は近いが性格は対照的で、天真爛漫でこれぞと思ったものはとことん追究する秋子に対し、冬子はいまひとつやりたいことが見つけられず、ひょんなことから宝塚音楽学校に入ったりするのだが、やがて家業のパン職人に惹かれるようになる。新人でまだそのイメージが固まっていたわけではない2人にまるで当て書きしたように、ぴったりの役柄であった。朝ドラはいまでこそ実績のある俳優が主演に起用されることが多いが、当時は新人の登竜門的な存在で、石原もこれを機に一躍、全国に知られることになる。