一方、「スキー場はバクチと一緒で、雪が降ればもうかり、雪が降らなければ赤字になります。このため黒字と赤字を繰り返してきました」と小笠さんは話す。
なぜ、スキーと宿泊という別な事業を一つにしているのか。「スキーで黒字が出た年に温泉宿泊施設につぎ込ませるためです。木地屋には23人の社員がいて、最年長でも42歳という若さです。温泉宿泊施設で若手の雇用を確保するためにも、スキー場が必要なのです」と小笠さんは力を込める。
そうした三セクの町内での位置づけや役割をもっと分かってもらおうと、小笠さんは講演資料を作成している。町内の勉強会などに呼ばれたら説明するためだ。「社員の誰もが講演できるように作っています」と語る。
赤字幅が広がるだろう今冬、三セクの必要性を町民に再認識してもらえるかどうかが勝負になるだろう。
Tシャツを着た若い女性がアップで胸を振るわせて…
ところで、五ヶ瀬ハイランドスキー場と言えば、九州地区のテレビCMでは少し知られた存在だった。町が100%出資したとは考えられないような内容だったからである。
経営難に直面していた2013年、パウダースノーの「ふわふわな天然の雪」をふくよかな女性の胸になぞらえて、Tシャツを着た若い女性が大映しにした胸を振るわせる映像を流した。そのエッチさぶりがかなり話題になった。
当時、町会議員だった小笠さんは「あまりも軽いCMだ」と思った。乳ガンを患って切除手術した人が温泉に入りにくいという悩みが話題になり始めていた頃で、「同じ三セクで温泉宿泊施設も経営しているのに、どういう意図があるのか」と三セクの社長を務める当時の町長に問い質したこともある。「町長は『そんなことを言っている場合じゃなくて、経営が……』と、もごもご言っていました」と小笠さんは話す。
翌年、CMの内容は少し変わった。「南ちゃん」と称する女性タレントを登場させ、「確か、エッチなCM流していたとこだよね」としゃべらせるなどして、前年の「問題作」を逆手に取って話題作りをした。
以後、「南ちゃん」が登場するシリーズが毎年流される。
小笠さんは「住民を登場させるべきではないか」と主張し、CMには町長をはじめとする住民が多数出演した。だが、CMがどこまで誘客に結びついたかは疑わしい。むしろ数字は厳しさを増すばかりだった。
CMでは「南ちゃん」に、「南も日本で一番南のスキー場も結構リアルに困っています。今シーズンはCMを見るだけでなく、五ヶ瀬ハイランドスキー場にぜひぜひ遊びに来てください」とコメントさせるようなことまでした。
しかし、経営難を宣伝するようなCMには、「見ていて面白いかもしれないが、マイナスイメージが付きすぎて人が来なくなるのではないか」という見方もあった。
もはやテレビCMの時代ではない、広告会社に大金を払っても効果はない
小笠さんはそうした宣伝の在り方を一変させようと考えている。「もはや若者がテレビを見る時代ではない。広告会社に大金を払っても、それだけの効果はない」と見切ったのだ。