領収書の1万円を4万円に書き換え
「会社名は明かせませんが、大企業の幹部による不正な経費精算がありました。長年にわたり領収書を偽造していたというケースです。例えば1万4800円の領収書があって、万の桁の〈1〉に線を2本書き足して〈4〉にしていました。これで差額3万円の儲けが出ます。では、なぜ書き足していたことがわかるかというと、特定の光の波長をあてると"インクの乗り具合"が見えてくるからなんです。〈4〉の書き順は、〈ペンを頂点から左斜め下に落として右横へスライドさせ(1画目)、最後に頂点から縦に1本線を引く(2画目)〉というのが一般的だと思います。この場合、2画目のインクは、1画目の上に乗ることになります。ところが、改ざんした場合、縦の線〈1〉は既に書かれているわけですから、書き足した線のインクが上に乗るんです。つまり、見た目では同じ〈4〉でも、1画目と2画目の書き順が逆なんです。もちろん千の位の〈4〉は一般的な書き順でした(笑)。
また、1をうまく7にすれば差額6万円の儲けです。しかしどんなに真似たつもりでも、筆圧の断面を見れば書き足していた部分は簡単に分かります。そもそもこのケースでは、普通のうどん屋でこんな額ありえるか、というような領収書もありました。領収書や契約書を改ざんしたというケースはよく持ち込まれますね」
奥さんによく似た女性のわいせつ動画の人物鑑定
同研究所が現在、特に力を入れているのが画像解析だ。ネット上には多くのアダルト動画があふれているが、こんなケースがあった。性行為中のある動画を鑑定してほしいと言ってきたのは当時20代後半の船乗りの男性。男性は職業柄、家を空けることが多かったという。そして奥さんによく似た女性のわいせつ動画を発見した。
「現在の奥さんの様々な角度の写真を送ってもらいました。粗い動画の画像に近接化処理(ドットの境目の色を互いに近づける処理)を行い、画像のマス目の境界をぼかします。輪郭や目鼻をはっきりさせた後、先鋭化処理で色と色の境界を強調します。こうして、平坦な画像に抑揚が加わることで人相判別が可能になるのです。そして、同じ角度の写真を重ね合わせるという作業をします。この時の結果は黒。奥さん本人でした」
