最近ではどのような事情での依頼が多く持ち込まれているのだろうか。

「いろいろな種類の依頼がありますが、特にお金欲しさで不正行為に及んだトラブルの相談は多いですね。例えば、火事が起きた場合の出火原因についてです。事故なのか、あるいは保険金詐欺のための放火なのか…。保険金がほしくて自分の家に火を放つ行為は昔からよくある犯罪ですが、実は、消防は明らかに放火である場合を除いて、出火原因について結論を出すことは少ない。理由は住人と保険会社で争いになるからです。消防は民事に介入したくないんですよ。でも、原因がわからないから、保険会社は不審な点が少しでもあれば保険金を支払わない。これに対して住人側は、『保険料を払っていたのに、なぜ支払われないのか』と抗議しますよね。

 かつてなら、放火をするにしてもペットの命までは奪いたくないと、事前に避難させておくなど不審な行動を取っていたことで状況証拠を突き付けられてバレるケースがありました。しかし、最近ではあえてペットも巻き込む放火が多いんです。そこで私たち民間鑑定の出番です。どれだけ争われても科学捜査の説得力には勝てませんから。そこで双方から依頼が来るんです。

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出火原因は様々あるが、一番多いのは放火

 現場に赴いたら最初に発火した場所、燃え方の広がりなどを調べます。部屋のどの部分の燃焼が激しいか、最も激しく燃えている部分が長い間燃えたということなので出火元の可能性が高い。火は低いところから高いところへと、もしくは酸素を求めて燃えていくので、その動きをさかのぼっていくイメージです。たばこの不始末とかよく聞きますが、火のついたたばこをぽんと畳の上に置いてもなかなか燃えませんよね。掃除してなくてほこりがたくさんあるとか、いろんな要素があってやっと出火する。そういった要因が必要なので、放火だったら何かしらの“不自然な”証拠が残ります。ヒーターがないところで灯油の成分が出たり、出火場所が複数だったり…。他にも蝋が見つかり、蝋燭を"時限装置"に使った放火だったなんてこともありました。出火原因は、自然発火、失火、放火と様々ありますが、一番多いのは実は放火なんです」

警視庁など捜査当局からの依頼も多い 撮影/宮崎慎之輔 ©️文藝春秋

 他にもカネをめぐる不正が多いという。最近、ある上場企業から筆跡鑑定の依頼があった。