2002年3月に発覚した「北九州監禁連続殺人事件」。起訴された案件だけで7人が死亡しているこの事件では、主犯の松永太(逮捕時40)と緒方純子(同40)が、緒方の親族らへの殺人罪(うち1件は傷害致死)に問われ、松永の死刑と緒方の無期懲役刑がそれぞれ確定している。

 すでに司法上の決着がついた同事件だが、そのなかには、事件化されずに“謎の死”との扱いを受けたものもある。

 

次の“金づる”にされたのは元交際相手

 松永と緒方が最初に関わったとされる殺人事件は、彼らに監禁致傷の被害を受けた少女・広田清美さん(仮名、以下同)の父である広田由紀夫さん(死亡時34)が、福岡県北九州市内のマンションで、通電などの虐待を受け続けたことによって、1996年2月に衰弱死したもの。

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 だがそれよりも前の、93年10月から94年3月にかけて、松永と緒方、彼らの子供と同居していた福岡県筑後地方出身の母子2人が、連続して死亡するという出来事が起きているのだ。

 女性の名前は末松祥子さん(死亡時32)。娘の名前は莉緒ちゃん(死亡時2)という。

亡くなった末松祥子さんと莉緒ちゃん

 祥子さんは20歳の頃に松永と交際していたが、88年に筑後地方の役所に勤務する男性と結婚。91年10月に莉緒ちゃんを含む女の子ばかりの三つ子を生んでいた。

 松永と緒方は、松永が福岡県柳川市で営んでいた布団訪問販売会社「ワールド」が破綻したことや、詐欺事件と暴力行為等処罰に関する法律違反事件で指名手配されたことを受け、同市から逃走。同県北九州市で人目を避けて暮らしていた。

 当時の彼らは、逃走に同行させたワールドの元従業員・山形康介さんに、彼の母親から多額の送金をさせるなどして、生活資金としていたのだが、松永の暴力に耐えかねた山形さんが、93年1月中旬に共同生活から逃げ出してしまう。そこで、次なる“金づる”を求めた松永が、祥子さんに甘言を弄して接近したのだった。