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父親は娘を不審に思いつつも金を送り続けた

「家出の前に1回、祥子に頼まれて20万円を振り込んだことがあったとです。でも、そのときは理由を言わず、ちょっと貸してほしいみたいな感じで、なにも疑いませんでした」

 祥子さんの家出については、夫からではなく、本人からの連絡で知ったようだ。

「5月初めごろに本人から『いま家出して別府(大分県)におる』っちゅう電話があったとですよ」

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 そこで彼女が子どもを連れて家を出たことを初めて知り、娘を叱っている。

「それはもう、なんしよっとかって。3人も子どもがおって生活できっとか(できるのか)ってね……」

 実際のところ、この時期の祥子さんは別府ではなく北九州市にいた。だが、連れ戻しに来られないようにするため、別府だと嘘をついていたのだ。松永という男の存在についても、02年に彼らの事件が発覚して、初めて警察から聞いたことだと話す。

「最後に50万円(実際は71万円)送ってから、10日くらいで亡くなったのかな。こっちはそれまでに、もっといっぱい送っとったとやけど、おカネがなくなっとるでしょ。(警察からは)『なんに遣ったかわからん』って言われたね。俺もバカやけん、送ってくれ言われたら、送りよったけん……」

 行雄さんはキャッシュカードを持っていないと説明する祥子さんに、別府市内にある郵便局留めで送金をしていた。しかし、彼女は父親や前夫からの送金以外にも、カネの工面を行っていた。その一つが消費者金融での借金である。

「祥子が死んでからわかったことやけど、(消費者金融からの借金は)250万から300万近くやなかでしょうか。50万ずつとかで、何軒かに借りとりました」

 地名以外の具体的な居場所を明かさない祥子さんは、頼み事があるときにだけ、実家に電話をかけてきたそうだ。

「2、3日に1回のこともあれば、間が空くこともあり、平均したら1週間に1回くらいやったですかねえ」

 その際に行雄さんは、離婚の原因についても尋ねている。

「まあ、訳わからんこと言いよったね。おとなしか婿さんなのに、婿さんから暴力を振るわれたやらね。もう明らかに嘘ってわかることを言いよると。あと、家出から1、2カ月経ってから警察に捜索願を出したら、本人がそれを取り消したり……警察からね、『本人が取り消してくれち言いよるから、取り消した』っち連絡を受けたとですよ」