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 生まれながらの家庭環境や予期せぬ病気や事故など、自分の力ではどうにもならない状況にまで自己責任を押し付ける社会ならば、産後すぐ赤ちゃんを遺棄してしまう事件は後を絶たないだろう。

 でもたとえ自分がどこからも孤立しているように感じても、遺棄や虐待、親子心中という悲惨な事態に陥るまえに、特別養子縁組という前向きな選択肢があることを、今悩んでいる多くの人に伝えたいと、陽菜さんは思っている。

主治医にかけられた「忘れられない言葉」

 最後に、今も陽菜さんの背中を押しているという言葉を紹介したい。

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 特別養子縁組に出すことに同意したあと、精神的な不安と、子どもを手放すことで荷が降りたという気持ちから、陽菜さんは自殺未遂をしたことがある。このとき精神科の主治医がこんな言葉をかけたという。

「あの子が生まれてきてよかったと思った日、あなたが産んでよかったと認められる日になる。

 あなたの選択は決して間違っていない。現に息子はきっと幸せにご飯を食べているだろ? そして授かった親御さんは大きな幸せを抱えているだろ?」

 コウ君はもうすぐ4歳の誕生日を迎える。4歳の子どもがどれぐらいの大きさなのか、もう想像もつかない。

「でも、コウの誕生日には毎年、ケーキを買って母とお祝いしているんです。きっと今年の誕生日も、お店で一番いいケーキを買うんだと思います」

 そう言って、昨年の誕生日に買った、イチゴたっぷりのバースデーケーキの写真を見せてくれた。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。